豊島逸夫の手帖

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ペロシ氏とパウエル氏の真意を測りかねる市場

2022年8月4日

まず、「YouTube豊島逸夫チャンネルをテスト開設@札幌」
本日札幌にて、YouTubeなるもののチャンネルをテスト的に開設した。内容は今日の本文にも関連ある話。まだ本格的な体裁ではないが、関係諸氏の協力を得て、取りあえずこんな感じで行くかなというテストバージョン。気楽に開いてみて。まず歩き始めてから、あれこれ考えるタイプなので。

https://youtu.be/vPma0pLXej8

そして本日のブログ本文。
ペロシ氏台湾訪問が発する市場の不安感は、台湾着陸までの時間帯で最も強まり、いざ着陸となると資産価格の変動は限定的となった。市場が危惧した危機的反応は見られず。

ヘッジファンドの中には、有事の米国債買いポジションを売り手仕舞う動きさえ見られた。所謂「噂で買って、ニュースで売る」典型的パターンだ。米国債利回りも下落後、反騰して一日の取引を終えた。なお10年債と3か月財務省証券の利回りが逆イールド寸前でニアミス状態になる局面も見られた。通常は10年債と2年債の利回り格差が注目されるが、プロ目線では3か月財務省証券との利回り格差をより強く不安視する傾向が強い。

ドル相場もドル安後、ドル高に振れた。方向感を掴み切れない。株式市場もパニック的な売りは見られない。有事の金買いも若干見られたが、NY市場大引けにかけて、早くも売り手仕舞われた。動いているのは専ら小者のファンドだ。

基本的な市場の見解として、米中とも共倒れは回避せねばならぬとの読みが目立つ。両国とも国内向けに強硬発言を繰り返す状況が続くとの解釈である。偶発的衝突リスクは解消されないので、テールリスクは意識している。

NY市場ではペロシリスクより、パウエルリスクの方が論じられる傾向も顕著であった。

サンフランシスコ連銀デイリー総裁が「今年は利上げ、来年は利下げ」との市場予測について聞かれ、「とんでもない。未だとても緩和の可能性を語れる状況ではない。まずはインフレ退治に傾注せねばならぬ。インフレ鎮静化の目途が立たなければ、次の一手は考えられない。」と穏健派としては異例の強い口調で語ったのだ。

FOMC後の記者会見でパウエル氏が、フォワードガイダンス(金融政策の方向明示)の棚上げに言及したので、市場はFOMC参加者の発言に何らかのヒントを求めざるを得ない。因みに市場ではFRBが四半期ごとに発表する経済予測の中のドットチャート(参加者の金利予測)を廃止する可能性も語られる。

市場に流れていた「来年は利下げ」の楽観論が、かくして強く抑え込まれると市場では益々視界不良感が強まる。

ペロシリスクは米中戦争のテールリスクを孕むが、パウエルリスクは真綿で首を絞める如き影響で市場にジワリ効いている。

最後に今日の写真はアグリスケープの自家農園で採れた野菜の数々。見たこともない野菜もあり、種類豊富。それをサラダとして供されるとこうなる。

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2022年