2022年1月31日
日本時間土曜朝、筆者のツイッター@jefftoshimaへ以下のツイートを載せたところ22万を超すアクセスがあった。オッサンのツイートとしてはかなりの数だ。
「いやはや凄い1週間が終わった。引け10分前にダウ500↑でもちゃぶ台返しないか皆ヒヤヒヤ。なんとか逃げ切った。とはいえ金融超緩和から引き締めへ移行期の幕明け。株価に染み付いたバブル的脂をダイエットで減らし引締期に備える時期。FRBからの助け舟は無い。パウエル氏は市場の友から敵役に変わった」
これが現在の株式市場の雰囲気である。
一方、NY金価格はFOMC以来下げが続き、再び1800ドルの大台を割り込んだ(KITCOグラフ赤線参照)。
株も金も転機を迎えている。
パウエル氏主導のインフレ退治が適温経済に軟着陸(ソフトランディング)できれば、穏やかな株高トレンドとなろう。その場合、金は売られよう。しかしハードランディングとなれば利上げで不景気となり、株は売られ金が買われる。この場合の金利上昇は悪性なので金には追い風となる。ややこしいところで見極めが難しい。
FRBにとって異次元量的緩和から利上げと量的引き締めへの転換は海図なき難所を渡る航海となる。資産価格大変動の荒波は覚悟の上だ。パウエル氏も1月FOMC後の記者会見で足元の株価波乱について問われた時、「我々は何も決めていないが、市場は数回の利上げと年内資産圧縮開始を織り込んでいる。我々の決定を先取りしていることは市場とのコミュニケーションが働いていることを映す。金融政策は期待を通して効くもので、その意味では適切と言える。」と答えている。
この発言はインフレ退治という政策目標達成のためなら株安も辞さずと解釈できる。同氏は「そもそも我々はひとつやふたつの市場を見ているのではない。我々の政策目標に合致した市場変動か否かを見極めているのだ。」とも発言した。市場と一線を画す冷ややかな姿勢だ。
FRB議長は金融緩和期に於いては市場の味方として歓迎されるが、ひとたび引き締め期に入るや、俄かに敵役となるものだ。その意味は市場にとって重い。もはや金・仮想通貨から株まで「何でも上がる相場」などは期待できまい。寧ろ「何でも下がる相場」を懸念することになるやもしれぬ。プロも一般個人投資家もリスク耐性が試されよう。
週末恒例のニューヨーク市場のプロ仲間とのZoom会議でも、画面に映る見慣れた顔がこの1週間でかなりやつれて見えた。サイドから照明が当たると、こけた頬の凹凸が目立つものだ。早々と見切りをつけ、故郷のオハイオに戻り、地元企業のCFOに転職する者もいた。筆者も2時間ほどの会議に参加して、やっとモヤモヤ感が幾分なりと晴れた思いだ。これから金融正常化を体験するのだ。非伝統的金融政策から脱却して正常の世界に戻るのだ。過剰流動性相場の夢からの覚醒だ。ほろ苦い夜明けのコーヒーなどを味わう時ではない。現実を直視して対峙する時なのだ。
金市場も何のかんの言っても超金融緩和によるカネ余り、過剰流動性マネー流入という恩恵を受けていた。それがこれからは期待できないという意味では株式市場と同じだ。
なお、地政学的リスクが無視できなくなっていることも指摘しておく。
例えばUAEのアブダビには国のど真ん中にドローンが撃ち込まれ、原油施設などが損傷を受けた。怖いのは同国にある原発だ。韓国製を導入している。万が一ここを狙われたらと思うと背筋がヒンヤリする。ドローンを撃ち込んだのはイエメンの親イラン武装組織。そもそもUAEはサウジとイランの間に位置して、微妙なバランス感覚で両陣営と微妙な距離感を維持してきた。中東、ペルシャ湾の要にある。フーシ派は今もUAE再爆撃予告している。
この問題は石油も原子力も排するエネルギー革命のジレンマを突いている。風力発電は風が吹かないリスクを欧州が体験している。他の新たなエネルギーも未だ発展段階だ。
そしてコロナ。オミクロン株リスク。
本欄1月11日付けで「2月初めにピークとなり、かなりトンデモない数の軽症感染者が出るが、2月半ば以降に急速に終息する」というシナリオを書いたが、どうやらそのような展開になりそうな感じだ。