豊島逸夫の手帖

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人民元は「国際通貨」か

2016年1月15日

上海株は大台の3000を割り込み、新たな低いレンジでの下値模索段階に入った。

人民元も、規制された上海市場(オンショア)と、規制されない香港市場(オフショア)のレート乖離が再び拡大している。

今週、香港オフショア市場で、中国人民銀行が国策銀行経由の大規模人民元介入を実施した時点では、乖離がほぼ解消されたかに見えた。

しかし、その後、人民元買い介入が一巡すると、オフショア人民元が再び下落しているのだ。

IMFのSDR構成通貨として、米ドル・ユーロ・円・ポンドに次ぐ第五の国際通貨としてのステータスを得た人民元に二つのレートが存在する。

依然、規制された通貨であることを示す現象だ。

例えば、ドル円相場が同時刻で東京市場では118円。香港市場では119円などという状況は考えられない。仮にそうなれば、東京で1ドル118円でドルを買い、香港で1ドル119円でドルを売れば儲かるという裁定取引が働き、118円と119円の間で一つのレートに収れんする。

それが、人民元には、同時刻に上海市場と香港市場で二つの違うレートが実際に存在するのだ。

こんなことで、果たして、人民元は「国際通貨」といえるのだろうか。

少なくとも、規制された上海市場の人民元は「ローカル通貨」であろう。

更に、中国当局は、中国人の海外資本逃避への規制も強化しつつある。個人の人民元売り・外国通貨購入は年間5万ドルまでとされているが、最近、外貨購入規制が強化されているのだ。例えば、中国国内の銀行店頭では、一回あたりの外貨購入額が引き下げられ、かつ、一日に店頭で受け付ける外貨購入の件数も制限される事例が話題になっている。いずれも中国特有の「行政指導」による措置と見られる。

ちなみに、国際都市上海の銀行業は、そもそも、外貨両替業務から始まった歴史がある。大手商業銀行上海分行の中にある銀行博物館には、18世紀の当時の銀行の様子が蝋人形館のごとく再現されていた。その頃の銀行の看板も残っていた。そこには「兌換各国金銀貨幣」と記されていた。

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更に、1949年に発行されたという60億元紙幣と、小さな丸窓に一握りの米粒が展示されていた。

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当時の60億元の購買力を示すためだ。金融節度を重んじるべき中央銀行としては極めて不名誉なハイパーインフレを体験したのだ。なお、そのコーナーの後ろには、紀元前に使われたという金貨が展示されていた。それだけで、中国人の金選好度がなぜ高いか分かる。

その銀行博物館は、一般公開されていたが、なぜか、今は休館になっている。

現代の人民元の真の価値は、いまだに藪の中だ。

この不透明感が払しょくされねば、上海株も頭が重い状況が続くだろう。

2016年