豊島逸夫の手帖

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舞い込んだNYからの日本株講演招聘

2016年7月12日

参院選挙が終わったところで、NYの年金・ヘッジファンドたちから、「アベノミクスの今後と円高」というテーマで円卓会議での講演を依頼された。いよいよ、海外マネーが日本株も視野に入れ始めたのか。実は過去3回、同様の講演を頼まれた後は、海外投資家の日本株買いが増加基調に転じた「実績」がある。逆に、昨年7月、講演依頼が直前キャンセルされた後は、日本株売りに転じた。

円卓会議、といっても、勉強会なのだが、参加者は、皆、スイス銀行つながり。後輩あるいは同僚の息子たちが、年金、ヘッジファンド、政府系ファンドなどに散っている。「同じ釜の飯を食った」という横の連帯感は強い。対カンパニーへのロイヤルティーより強い場合もある。いつクビになるか分からないからだ。独立系の筆者には、セルサイド(販売側)のバイアスがない本音の意見を求める。気のおけない仲間意識が強く、ざっくばらんの質疑応答になる。円卓会議にありがちな、かしこまった雰囲気など感じられない。

今回、安倍政権が勝利したことで、一時危ぶまれた「日本には珍しい長期安定政権」という安心感が再び芽生えているようだ。年金運用者たちは、コーポレートガバナンスコードに一定の評価をあたえている。

とはいえ、「結果をだせていない」アベノミクスへの評価は厳しい。

ドル安円高予測も根強い。

それでも、日本株について吟味したいのは、米国株に高値警戒感が、欧州株にはBrexit懸念がつきまとうからだ。

いまや、国際分散運用も、どこがマシか、との相対的判断がベースになっていることを実感する。

気になるのは、やはり為替動向。

円高なら日本株は売り、と決めつけているので、厄介だ。

しかも、円安シナリオは、米ドル次第と他人頼み。日本側の強力な財政出動、日銀追加緩和は見込んでいるが、効果は一過性のカンフル剤と冷ややかだ。そこで、いつもの構造改革論に入ってしまうと、話が進まなくなる。「日本国民は、構造改革の痛みを本当に受け入れる気があるのか」。参院選の結果が、アベノミクス再認と位置づけても、彼らに対する説得力に欠けることは否めない。

なかなかに手厳しい議論になるのは必至だが、「米国も欧州も構造問題をかかえているではないか。」と筆者は切り返す。

少なくとも、ファーストクラスのフライトを用意してまで招聘するのだから、日本株を見捨てたわけではあるまい。彼らとて、イールドの追求に四苦八苦しているのだ。ヘッジファンドに至っては、解約も相次ぎ、存亡の危機に瀕するところもある。わらにもすがる思いで、日本株も検討する姿勢も感じられる。

世界的に超運用難の時代。

日本株とて捨てたものではない。

金も日本株と両方持って、初めてヘッジ資産としての効果が発揮される。

米国のヘッジファンドも今年は金を大量に買っている。

その金価格は、短期的調整モード。

リスク回避モードが徐々に引いている。

でも、売りの深追いはないね。

2016年