豊島逸夫の手帖

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消費増税延期、募る世代間不公平感

2016年5月31日

消費増税が2019年10月まで延期された。増税はいやだが、果たして、再延期して、国の台所の方は大丈夫なのか。

結局、財政赤字のツケは現役世代に廻される。

世代間の損得勘定による不満は募るばかりだろう。

バブル世代は少なくとも楽しい思いもさせてもらった。しかし、氷河期世代は、産まれてこのかた、いいことが1つもない。おまけに、これから益々悪くなる。

この世代間の不公平感が、消費増税延期により、益々深まること必至だ。

安倍首相は消費増税先送りでも「財政健全化目標は維持する」と大見得を切った。

しかし、どう見ても、国際公約となっている2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化は、不可能になった。

景気回復よる税金の増収分を「アベノミクスの果実」と呼び、一億総活躍プロジェクトに使う胸算用だった。消費増税を当て込んで1.3兆円分の社会保障充実メニューを用意していたが、肝心の財源が事実上消えた。前回本欄に書いた「ヘリコプターマネー」のごとき禁じ手でも使わなければ、到底達成できない。

社会保障充実メニューと必要財源は以下の通り。

低年金者に年6万円を給付  5600億円

基礎年金の受給資格を短縮   300億円

低所得者の介護保険料軽減、国保の財政支援  5000億円

50万人分の保育の受け皿確保  1000億円

更に、一億総活躍プラン

保育士や介護士の待遇改善  2000億円

給付型奨学金の創設  金額未定

幼児教育の無償化対象拡大  金額未定

これらが、肝心のカネのアテがなければ、全て宙に浮いた状態になっている。

いっぽう、安倍首相の支持率はサミット後アップしている。オバマ大統領広島訪問の感動・高揚感が未だ鮮明に記憶に残るからだろう。しかし、徐々に現実に戻ると、不安感が再び頭をもたげるだろう。

セミナーで直接参加者と対話するたびに、複雑な心境を肌で感じている。

2016年