2016年3月23日
「それみたことか」と言わんばかりに、トランプ氏のボルテージが上がっている。
「いいかい、ずっと私が言ってきたことだ。ブリュッセルを見給え。美しい街で犯罪はゼロだ。それが、いまや悲惨な街になってしまった。米国も本当に気をつけなくてはいけない。我が国に誰を入れるか、注意深くなる必要がある。」
米国テレビでの発言である。
更に、別の局に出演時には、またもや物議を醸す発言をした。
サラ・アブデスラム容疑者に対して「ウォーターボーディング」という「水責め」を課してもかまわない、と語ったのだ。米国では、この特殊な水責めの短期的な利用は身体的な損傷を起こさないため拷問ではなく尋問であると主張され、水責め尋問禁止法案がブッシュ大統領が拒否権を発動して廃案となった経緯もある。オバマ大統領はウォーターボーディングを含めた拷問を禁止している。それゆえ、問題発言となるのだ。
「私に言わせれば、法律を変えるか新たな法律を作れば、ウォーターボーディングも可だ。法制を拡大するならば、私は、それ以上やるよ。ブリュッセルのテロのような事件が米国で発生すれば、私は国境を閉鎖する。」
対抗馬のクルーズ候補も、「私が大統領になれば、イスラム過激派を敵とみなし、打破する。」と語り「シリア避難民の米国への入国は、審査制度のレビューが行われるまで、停止すべきだ。」とも述べている。
いっぽう、クリントン候補も「それみたことか」と言わんばかりに語っている。
「これまで私が主張してきたごとく、ISのテロ行為・戦術を打破するため明確な目的意識を持たねばならない。彼らのシリア・イラク内での支配地域を奪還するのだ。外国人傭兵や武器の流入も防がねばならない。そのために欧州の盟友と協調することが必要だ。」
ブリュッセル・テロ事件の惨状をテレビで見せつけられた米国人たちが、トランプ氏とクリントン氏の主張のどちらに反応するであろうか。
市場が懸念するのは、トランプ氏に対する心情的支持派が増えるのではないか、ということだ。
トランプ・リスクが更に顕在化する可能性が出て来た。
これまではブラックスワン程度の扱いであったが、ブリュッセルのテロ事件により、一つの現実味のあるシナリオとして意識されそうだ。