2016年12月13日
12日のNY原油先物価格は、54ドル台の高値をつけた後、ほぼ一貫して下げ続け52ドル台で引けた。いっぽう、外為市場のドル円は、116円台を瞬間的に超えた後、ほぼ一貫してドル安円高傾向が続き115円攻防の様相だ。直近の相場のカタチを見れば、103円台から106円台まで一気に円安が急進行した反動が来ている。米株価は、けん引役だった金融株の上昇に、さすがにブレーキがかかっている。いっぽう、ナスダックのIT関連は引き続き冴えない動きだ。ゴールドマンサックスとフェイスブックの株価が、いずれも1%強下げているのが象徴的である。そして、今回の相場地殻変動の震源地ともいえる債券市場では、米国10年債利回りが2.5%を突破した後、2.4%台にまで反落した。
株・ドル・原油のトリプル高も、FOMC前に、投機筋のポジション巻き戻しが生じている。ビッグ・イベントを控えての「身辺整理」とでも言おうか。
筆者の注目点は、ドル高で原油高という「価格の歪み=misprice」現象だ。市況の法則では、ドル高、しかも、強烈なドル高は、商品(コモディティー)に対して逆風である。しかし、原油市場はOPEC・非OPEC減産を歓迎して急騰した。ここで市場を冷静に俯瞰すれば、現時点で考えられる原油の好材料はほぼ出尽くし。これから、OPEC・非OPEC諸国の協定順守、申告生産量の信頼性など、持続性に係る問題が意識される番だ。更に、意図的に増産ピッチを速め、その高水準から「減産」という「戦術」も見え隠れする。妥協の産物である減産合意の構造には脆さも孕む。
ドル高も、FOMCの視点では、過去の議事録を見ても、米国経済へのマイナス要因として記載されてきた。今回の急速なドル高進行の負の面が、FOMCで議論されることになろう。
債券市場でも、利上げを見込み、投機筋が買いポジションを一気に売りポジションへ「倍返し」した。しかし、ふと見れば、債券売りのファンドは、ほぼ売り尽くしている。あとは、短期決戦で、虎視耽耽と買戻しのタイミングを狙っている。
株式、外為、債券、商品の市場を揺らせてきた、トランプ次期大統領も、じわりと本性を表わしつつある。米国を出てゆく企業の社長には自ら電話して、思いとどまらせる。殺し文句は、再輸入したら35%の関税を課すという保護主義的言動だ。中台問題についても、いきなり、ひとつの中国政策という根幹に切り込んだ。
これまでの株・ドル・原油トリプル高現象が顕著な市場の潮目に変化の兆しが見える。
その例として、金価格の動きが挙げられよう。
金利を生まない金は、利上げ・ドル高の強烈な逆風のなかで売られ続けてきた。ところが、1150ドルで下げ渋り、利上げが予想されるFOMC直前の12日には反騰してきた。金は世界経済を映す鏡、あるいは、小宇宙といわれる。それゆえ、マクロ市場動向の先行指標として筆者は見てきた。
2017年まで俯瞰すれば、これまではトランプ相場のオープン戦。1月20日のトランプ新大統領就任演説を号令に、本戦が始まる。オープン戦はヘッジファンド主導。本戦は、加えて、欧米年金・政府系ファンドなどの長期マネーも参戦しよう。
相場に絶対はない、といわれるが、ひとつだけ、例外がある。それは、上げ続ける相場は絶対にない、ということだ。株価も急騰が続くと、それこそ、トランプバブルに終わってしまう。トランプ相場も、ここで健全な調整が入り、投機的買いを振り落としたほうが、持続性は堅固になろう。
今日のトランプ語録
トランプ氏、投票してくれたアイオワ州にお礼参りThank you tour。 低所得、中間層の白人支持者が多い。「私たちゆえに株価上がってお金持ちの人たちは大喜びだよ。私は成功した人たちに入閣してほしいんだ。やっぱり実績がないとね。野球だってゴルフだってそうじゃない。」「私は、米国を去るという会社の社長さんたちに片っ端から電話するの。楽しいよ。ハロー社長さん。元気にやってますか。ところで米国から去るんですって、、、。」
というわけで、トランプ氏は、成功者でお金持ちを続々と入閣させてます。