豊島逸夫の手帖

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FRBより日銀に身構えるヘッジファンド

2016年7月28日


NYのヘッジファンドは、FOMCより日銀金融政策決定会合にサプライズ性を予感しているようだ。
日銀にとって、動けば金融政策の限界、動かなければ失望。どちらに転んでもlose-lose負け負けのシナリオゆえ、財政出動がショック吸収剤となる。「その痛み止めを、安倍首相は2日早く使ってしまった。」との深読みも聞かれる。安倍首相が27日に福岡講演で事業規模28兆円という数字を明示したからだ。50年債発行観測報道と合わせ技で、日経平均は一時400円以上急騰し、円は106円台半ばまで円安に振れた。この時点で、ショックアブソーバー効果を使い果たしたというわけだ。
仮に、「ゼロ回答」となれば、一気に100円近傍まで円買いを仕掛けたいとの思惑も透ける。


外為市場の地合いもドル安に振れやすい。
日本時間昨晩発表されたFOMC声明文では、「短期リスクが弱まった」との記述が注目され、9月利上げ可能性復活論も再び語られた。しかし、市場は声明文発表直後こそドル高に振れたが、その後、ドル安に転じた。やはり、利上げの切迫感に欠ける展開だ。
そこには、やはり米大統領選を巡る不透明感がジワリと効いている。
トランプ大統領誕生も覚悟せねばならぬ時期に、果たして利上げ決断ができるか、との見方が根強く残るのだ。
株価を注視するウォール街が米大統領選に求めるのは「安定性」と「継続性」。それゆえ、「どちらがマシか」との判断で、クリントン候補を望む声が多い。しかし、足元では、トランプ候補支持が僅差ながら上回る調査結果も出て来た。気になる展開だ。
昨晩のNY市場でも、午後のFOMC声明文を見届け、早々と職場から早帰りする「遠距離通勤組」が目立った。夜のゴールデンタイムに放映される大会生中継を自宅でジックリ見たいからだという。
FOMCより米大統領選に注目というわけだ。


今週は民主党大会だが、直前に、同党全国委員長ワッサーマン・シュルツ氏が、サンダース議員の妨害を図っていたことが指摘され、辞任に追い込まれた。サンダース支持者たちは激しく非難。民主党大会初日のサンダース氏演説では、青色のサンダース支持プラカードが会場内に溢れた。「バーニー・コール」が鳴りやまず、同氏の演説開始まで数分かかったほどだった。サンダース氏が民主党候補かと錯覚するほどの熱気が印象的であった。
このムードを、クリントン候補が、最終日の演説でどこまで盛り返せるか。夫のビル・クリントン氏も応援演説を行ったが、夫婦の昔話が目立った。オバマ大統領の友情出演も注目されるところだが、なにせレーム・ダックである。


かくして、やや劣勢気味のクリントン陣営だが、ここにきて、トランプ候補が、オウン・ゴールとも思える舌禍事件を引き起した。
「ロシアよ、あなたがたが、行方不明のEメール3万件を見つけだすことを願っている。」
27日の記者会見で、トランプ候補がこう言い放ったからだ。
この発言の背景には、一連のEメール問題では、まだ公表されていない部分があるのではないか、との疑惑が指摘される。
それにしても、ロシアにハッキングを促すかのような表現は刺激的だ。さすがに、トランプ陣営の選挙対策関係者からは、発言修正の動きも見られる。

とはいえ、かねてから、民間サイバーセキュリティー会社などが、ロシアによる米大統領選関連情報のハッキングの可能性に言及してきた経緯もある。
民主党陣営内には、ロシアと思われるハッカー経由で、情報漏えいとの疑惑が流れていた。ロシアはトランプ大統領誕生を期待しているのでは、との見方まで党内に流れる。
対して、トランプ候補は「プーチンは私が好きなようだ。」とツイッターで呟いていた。
その流れで、勇み足的な発言に至ったわけだ。

かくして、大統領選も予断を許さず、利上げ決定も出来かねる状況で、日銀金融政策決定会合を迎えることになった。
なお、昨日流れたような、一部外国メディアの観測記事は、投機筋にとって格好の材料と化すので要注意だ。


そして、貴金属市場の話題は、プラチナが昨日NYで50ドル以上急騰したこと。これで金1340ドル前後に対して、プラチナが1130ドル台。一時は300ドルを超えた値差が210ドルまで縮小した。それでも、まだ、値差は200ドル以上あるのだけれどね。
投機筋もさすがに、300ドルを超えた時点で、開きすぎと見て、一斉にプラチナ買いに動いているわけだ。

2016年