豊島逸夫の手帖

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米大統領選挙、市場への影響は?

2016年2月3日

どの候補者が最も市場にやさしいか?

マーケットでは「雨夜の品定め」が始まった。

ウォール街にとって、もっとも望ましい候補者は、アイオワで健闘して共和党3位に食い込んだ、保守本流のマルコ・ルビオ氏だ。本命とされたトランプ氏が一位をとれなかったことには、安堵している。その理由は、トランプ氏の言動があまりに「予測不可能」だからだ。市場は、不安定性を最も嫌う。共和党一位になったクルーズ氏については、トランプ氏とルビオ氏の食い合いで浮上したとの評価。今後各州での選挙戦に勝ち続けるために必要な、党内の広範な支持基盤の視点では、偏りがある。

いっぽう、民主党でサンダース氏が、クリントン氏と大接戦を演じたことは、歓迎する向きが多い。といっても、市場でのサンダース氏の好感度は低い。特に、公立大学の授業料免除など若者受けする政策は、財源として大増税が前提となる。更に、社会主義者が米国大統領になるシナリオは、多くの米国人にとって悪夢のシナリオだ。それゆえサンダース氏では民主党への支持が弱まり、共和党に追い風となる可能性を期待しているのだ。民主党にとってオウン・ゴールのごとく、共和党に得点を与える展開を読んでいる。

クリントン氏は、ウォール街でも、依然本命ではある。しかし、TPPには反対。高薬価を厳しく批判して、バイオ株を急落させた。ボルカー・ルールに基づくドッド・フランク法(金融改革法)による規制の強化も主張。更に、高速度取引への規制導入も提案している。これらが、ウォール街ばかりが儲けているとの国民の反感に訴求する人民迎合的言動と見られている。

なお、サンダース氏は、シェール開発のフラッキングが環境に与える悪影響を重視しており、市場では原油高の連想も働く。

総じて、本命とされたクリントン氏が苦戦しているので、共和党が相対評価で浮上。その共和党では、ルビオ氏という「最もまともな」候補者が浮上したことが歓迎されている。特に、ルビオ氏は、ウォール街が目の敵にしているドッド・フランク法の廃案を唱えている。金融改革法により、大手投資銀行は自己勘定売買が制約され、トレーディング部門が縮小され、収益機会が減った。その結果、市場参加者も減少することで、マーケットの流動性も減り、株式・原油価格乱高下の素地を作ったことは否めない。

さて、アイオワ州で始まったばかりの大統領選挙。次のニューハンプシャーは、「大統領選挙の風見鶏」として毎回注目される州だ。サンダースのお膝元に近いので、クリントン氏には不利。アイオワ州でのサンダースの勢いが増すことになろう。そこまで読んで、クリントン陣営は、その後の南部サウス・カロライナ州に勝負をかける構えだ。

まだ始まったばかりの大統領選だが、事前予測とはかなり異なる展開の様相だ。日々の株価に影響を与えるような材料ではないが、長期的には、市場の底流を変える可能性を秘める。

次に、日銀マイナス金利導入により、三菱UFJ銀行は、早くも、大企業向け預金に手数料を課すことを決めた。今後の注目は、体力が弱い地銀。ここは中小企業や個人預金へも手数料を課す措置に踏み切る可能性がある。そうなると、マネーの一部が「金」に向かう可能性が強まるので注目している。

更に、日本国債個人向け10年債の募集が中止された。利回りがマイナス、つまり国債保有者に利息を払わせるようなことは、さすがに出来ないから。昨日本欄で書いたように、10年などの長期債にまでマイナス金利が拡大したことがもたらした現象といえる。これで、国債も安全資産とはいえなくなった。これも、マネーが金に流入する理由である。

いずれも日本特有の要因ゆえ、直ぐに国際金価格が上がる話ではない。ということは、安いいまのうちに円建て金を買っておく切迫感が出始めたのだ。

さて、今日の旨い物写真。

寒くなって、鮨が、最も旨い季節だね~。

シャキシャキ新鮮な貝類。

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私が大好きな青魚。

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そして、にはま。(煮蛤)。

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今年は未だ北海道で生のタチ(鱈白子)を食していないのが心残り。。。。なぜか、2月のセミナーは日本の南ばかりなので。。。

2016年