2016年6月23日
英EU離脱か、残留か。日本時間24日に、短時間に円相場が上下に5円程度に振れ、予想変動幅は10円に達する可能性もある。国民投票の結果から生じる市場の衝撃を、世界に先駆け、アジア時間帯の日本市場がまともに受ける巡り合わせになるからだ。
いまや、株式・外為市場は、アルゴリズムによる高速度取引が席巻するだけに、ポンドの瞬間的乱高下は、瞬時に円相場にも「伝染」する。
世界の市場関係者が、急遽、ジャパン・デスクを臨時増員するなど、万が一に備えている。世界の経済メディアの関心も、伊勢志摩サミットを凌ぐのではないかと思われるほどだ。
しかし、冷静に見れば、「リーマンショック」と比し危機の様相はかなり異なる。
まず、今回は、大手金融機関の破たんをもたらすほどの債務危機ではない。リスク回避により、多くの金融機関・投資家たちが、暫時市場から撤退することから派生する「流動性の枯渇」が懸念されているのだ。この流動性リスクは想定内ゆえ、中央銀行間で緊急資金供給の体制が出来ている。
更に、為替相場の急変動に対して、さすがに「秩序ある状況」とは言い難くなれば、ポンド防衛・円売り介入もあり得る。
なお、仮に英EU離脱賛成派が勝利しても、その意志をEUに通告して、実際に離脱するまで最低2年、場合によっては3年以上を要する可能性がある。従って、リーマンのときは急性の経済ショックであったが、今回は、ジワリと影響が拡大してゆくパターンになる。24日が万が一、ジョージ・ソロス氏予言のごとく「暗黒の金曜日」になっても、その衝撃が長期間続くとは考えにくい。コンピューター売買の常として、初期変動は増幅されるが、いずれ、新たなレンジに収れんしてゆく。
いっぽう、リーマンショックに比し、悪性といえる点もある。
そもそも、英国民からEU離脱を望む声が強まった理由が、「体制への反感」にあるからだ。国際化(グローバリゼーション)の流れから取り残されたと感じる庶民層の不満がうっ積して、移民に対する拒否反応や内向きの保護主義的傾向を醸成している。米国のトランプ現象や欧州内の地域独立運動などと共通項がある。英EU離脱ともなれば、世界経済の縮小傾向が加速するリスクをはらむ。
厄介なことに、キャメロン首相やソロス氏など著名人がEU離脱のリスクを厳しく語るほど、離脱派の「体制への反感」が強まり団結もより堅固になる。残留派女性議員殺害事件後、残留派の勢いが増したが、選挙日が近づくにつれ、離脱派への根強い支持も目立つ。
このような両派拮抗した状況で、選挙日を迎えた。
残留派勝利なら、海上に浮かぶ氷山のごとく、どうなるか推測可能だ。しかし、離脱派勝利のケースは、海面下の氷山に似て、およそ見当がつかない。ここが不確実性への不安を惹起しているのだ。
出口調査もなく、浮動票の動きが接戦では重要になる。
英国の天候などの要因が、日本経済を揺らせ、参院選挙にも影響を与えるなど、思いもよらぬ展開になってきた。
参院選挙が、100円程度の円高環境で進行するか、110円近くの円安のなかで論戦が続くのか。「対岸の火事」とはいえない状況である。
金価格は1260ドル台まで調整。とにかく投票結果待ち。模様眺め。