豊島逸夫の手帖

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20ドルから50ドルへ、大手原油予測大幅修正の真意

2016年5月17日


17日のNY原油先物市場は、期近47ドル台まで急騰して引けた。
最大の要因は、原油20ドル割れを予測していたゴールドマンサックスが50ドル予測へ転換したことだ。
日本人の感覚としては、あっけにとられるほどの「上方修正」だが、同社は過去に原油200ドル予測を出したこともある。もはや「オオカミ少年」扱いかと思いきや、市場は無視できず買いを加速させる。
さっそく、NYMEXフロアーの雰囲気(センチメント)を現場の後輩たちに聞いてみたが、目先は強気が勝る。
彼らが常に注目する原油現先スプレッドも縮小が続いている。
期近と一年後受け渡しの価格差を比較すると、2015年12月8日時点では、8ドル台。2016年4月13日には4ドル台。そして昨16日には期近と2017年6月ものの値差が約2.5ドルまで縮小してきた。
足元で需給がひっ迫してきたことを示す。


特に、原油急落局面では殆ど無視されてきた産油国の地政学的要因が、ここにきて囃されている。
短期的供給不安を連想させる材料には事欠かない。
―カナダの山火事が、アルバータ州の石油生産地にまで拡大。オイルサンドの生産者が生産停止に追い込まれている。
―ナイジェリアでは、反政府組織がメジャーの海上原油生産施設やパイプラインを攻撃。重大な生産障害。
―ベネズエラの政情不安。マドゥロ大統領が、「国内の一部勢力と米国が仕組んだ政権転覆計画あり」との理由で、60日間の非常事態入り。
―リビアではISによる港湾攻撃・封鎖の影響が長引き供給不安。

いっぽう、需要面では中国・インドが堅調とされる。
特に、国際エネルギー機関(IEA)による、「インドが石油市場の成長エンジンの座を中国から引き継ぎつつある」との見通しがフロアーでは注目されている。
その結果、短期的な需給ひっ迫観測が強まっているのだ。


忘れてならないのは、ドル安も原油のような商品には上げ材料となることだ。ゴールドマンサックスの予測転換のベースには、同社のエコノミストが4月雇用統計発表後、6月利上げ観測を撤回して、9月と12月の2回説に組したことがある。そこで、原油だけでなく、金価格3か月予測も1100ドルから1200ドルへ、これまた大幅上方修正しているのだ。
とはいえ、同社も、2017年の原油価格となると、慎重な姿勢を崩さない。
そもそも地政学的要因は一過性。50ドル近くになればシェール生産者も息を吹き返す可能性がある。
フロアーの投機筋の間でも、OPEC総会が開催される6月2日までの賞味期限限定と割り切って買い上げる、との声が目立つ。
まずは、ゴールドマンサックスの高値予測に乗って短期売買益を狙う姿勢だ。

結局、OPEC加盟国・非加盟国の間での調整が覚束なく、生産者自らが価格調整能力を放棄している限り、原油価格形成主導力はNYMEXの短期投機家たちの手に握られる。
その投機筋は、トレンド・フォローに徹し、目先のモメンタム(市場の勢い)を増幅させる。
「いつでも売り逃げられるような態勢で臨む」
高速度取引が席巻する市場ゆえ、流れが変われば、瞬時に売りに転換する構えが透ける。
なお、NYMEXフロアーも今年限りで閉鎖へ。電子取引全盛の象徴的出来事。


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ところで、今年はいきなり年初から、専門家が株・為替を外しまくり。そこで、私は、経済テレビ局に、「反省会番組をやるべし。勿論、言いだしっぺとして私は参加する。」と言ったら、断られた。ほかに出る人がいないから。専門家なら言いっぱなしは良くないよ。説明責任あるやろ。皆、プライドの塊だ。私は昨年3月まで月一で毎月日経平均・円相場の予測グラフ書いて、その反省を語る30分番組に出ていたのに、突然切られた。テレビ局の沽券にかかわるのかね。

ちなみに、日経マネーが秋に例年本紙付録で発刊する「金特集」では、私だけが、前年予測数字を出して反省の弁も語っている。


今日の写真は、まず、散歩の途中で見つけたの野生野イチゴ畑。小さな果実がかわいらしい。癒される。


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そして、食い物関係は、シーフードのスープ仕立て。素材だけの味が自然で良かった。


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そして、トマト味のニョッキ。トマトソースが絶品だったな。シンプルな料理ほど料理人の実力が出るもの。


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この二品のコラボは味のメリハリがあった。

2016年