豊島逸夫の手帖

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気になるイエレン氏・ドラギ氏の「仙台密談」

2016年5月25日


海外市場はサミット本番より前座のG7財務相・中央銀行総裁会議のほうが気になる様子だ。発言が直接的に市場を動かすのはオバマ・メルケル・アベよりイエレン・ドラギ・クロダなのだ。


特に、仙台会議では、イエレン氏とドラギ氏が、「ヒソヒソ話」する光景が目撃され、「証拠写真」も出回っている。会場となった老舗温泉旅館敷地内に集合写真撮影のため三々五々集まった参加者たち。まだ全員揃うのを待つ段階で、用意された椅子に座りつつ歓談している。画面右側は未だ椅子に座っているのは二人だけ。それがイエレン氏とドラギ氏。ジェスチャーを交え、カラダを乗り出すように、話し込んでいる印象を受ける。左側の集団で談笑中の黒田総裁との距離感が微妙だ。このような二人の「仲良し」ぶりは、会議中、時折目撃されている。
市場関係者は、どうしても、「妄想」に走る。
いったい、何を話しているのか。


ときあたかも、米地区連銀総裁の相次ぐ「6月利上げ可能性示唆」発言が市場で材料視されている。FRBが追加利上げを決定すれば、織り込み済みとされても、やはりドルは買われる可能性が無視できない。現在、市場内に蓄積して膨張しているドル売り・円買いのポジションが、一気に巻き戻されるかもしれない。FFレート先物から算出される利上げ確率も、6月FOMCが、一時は4%まで下がっていたが、4月FOMC議事要旨発表後、38%まで急上昇した。とはいえ、未だ30%台ともいえる。それゆえ、ドル売りポジションをここで一気に買い戻すまでには至っていない。5月27日、6月6日と予定されているイエレン氏講演に、なんらかのヒントを求めている。

ドラギECB総裁も、米利上げには、注目せざるを得ない。ドルが買われれば、ユーロも円同様に売られる可能性が強いからだ。ECBが追加緩和せずとも、ユーロが下がってくれる。ドラギ総裁は記者会見で再三「ユーロ安を狙った金融政策ではない」ことを強調しているが、それは建前。本音はユーロ安「熱烈歓迎」と市場は読んでいる。更に、ECBへの「追加緩和圧力」が若干なりとも弱まるかもしれない。


「いつ利上げするつもり?」「・・・・」
ドラギ氏のジェスチャーに、イエレン氏が身を乗り出すごとく語りかけている様子の写真に、市場の「妄想」は拡散する。
そして、黒田総裁の視線は二人とは逆方向で談笑しているのだが、耳は「ダンボ状態」だったかも。
タイミングとしても、G7仙台会議直前に、4月FOMC議事録が発表され、あらためて6月利上げが意識され、外為市場は円安に振れた。黒田総裁から見れば、円安に振れてくれた、という感覚かもしれない。イエレン氏が訪日にあたり持参した「お土産」とも受け取れる。本当に6月利上げを決断してくれたら、日銀への追加緩和圧力もある程度弱まるかもしれない。金融政策に残る切り札が限られているだけに、ほのかな望みをいだいても当然だろう。当然、イエレン氏への視線も熱くなろう。
二枚の写真を見つつ、筆者の妄想も広がるばかりだ。


さて、利上げの切迫感が強まり、ドルインデックスも92から96近くまで上がってきたので、ドル建て金価格は続落して1220ドル台。NY金先物市場における買い残高が膨れ上がっているので、売り手じまいが出やすい地合いだ。その割には、この程度の下げで済んでいるな、という感覚。プラチナは1000ドル大台攻防となった。

2016年