豊島逸夫の手帖

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105円か115円か、割れるヘッジファンド

2016年4月6日


ヘッジファンドが最も恐れるのは、顧客の解約だ。
多くのファンドの運用実績が昨年後半からマイナスに沈み、それでも年間2%のフィーを払い続けてきた顧客たちに、このままでは見切られるリスクに怯えている。既に、米国大手年金の間ではヘッジファンド外しが始まった。
5月が決算期のファンドも多いので、起死回生の一打を必死に模索している。
そこに生じたドル安・円高加速現象。
追い詰められたファンドには、願ってもないチャンスと映る。
しかし、相場観は割れている。
円高進行で110円攻防までは想定内であった。
問題は次の一手。
ハト派イエレン議長には逆らわず、既存の円買いポジションをロールオーバー(継続)するか、新たに円を買い増すか。
いっぽう、利上げ6月の可能性を視野に、110円近傍を「円相場の高値圏」と読み、円買いポジションを手仕舞い、円売り再開に動くファンドもある。
ヘッジファンドの米利上げ予測も割れているのだ。


経済統計の見方も様々だ。
3月ISM景況感指数が製造業・非製造業改善を重視するファンドもあれば、3月米貿易統計の赤字幅拡大を懸念するファンドもある。
ヘッジファンドの場合は、まずポジションありきで、その正当化あるいは後講釈で、経済統計の都合の良いとこ取りの傾向は否めない。
総じて、トレンドフォローで超短期売買に徹するCTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー)は円買い続行。中期的市場の流れを見て売買を仕掛けるグローバル・マクロ系ヘッジファンドは、「いずれ米利上げ」との読みでドル買い・円売りに動く傾向がある。
共通しているのは、リスク回避モードの中で、円が「安全通貨」として買われる現象を、一過性と割り切っていること。リスクの震源地である原油市場が極めて不安定ゆえ、リスクオン・リスクオフの間隔が狭まっているためだ。
なお、シカゴIMM通貨先物市場の円買いポジション残高が注目されているが、ヘッジファンドは取引所経由だと目立つので、銀行との相対取引で外為売買を行うケースが多い。IMMの数字は、氷山の一角なのだ。それだけポジションも多様化している。


円相場見通しが割れているので、日本株についても、順張り、逆張りに分かれる。
日本で言われているほど、圧倒的売り優勢とは言い切れない。
基本的に日本株を売り尽くし、運用配分がアンダーウェイトになっていることだけはたしかだ。
原油価格が再上昇して、利上げ観測が高まれば、ドル高に転じ、円高には歯止めがかかり、日本株も買われるシナリオも充分に考えられる。
いずれにせよ、外国人投資家そして海外要因頼みの日本市場の実態は変わらない。

2016年