豊島逸夫の手帖

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ビミョーな雇用統計、円安に振れる

2016年9月5日

金曜発表の雇用統計。8月は非農業部門新規雇用151000人増。良しとすべきか、否か、実に微妙な数字で、市場の判断も分かれる。

もう完全雇用に近いのだから、これまでのように月20万人もの雇用増を期待する方が無理という考えに立てば、15万人でもOK。10万人くらいでも、まぁ良しとする。いっぽう、いやいや、ジャクソンホールの講演では、3か月平均で19万人だから、雇用は強いと語っていたゆえ、15万人では物足りないとの見方も。事前予測の18万人をも下回った。更に、賃金(平均時給)が、これまで、おおむね0.2%から0.3%増だったのが、0.1%に下がったことが気になる。だから、この数字は悪いとする解釈もある。

市場の反応も、「当惑気味」で、CMEのFED WATCHでは、9月利上げ確率が、木曜日には24%だったが、金曜の雇用統計発表後は、一時27%にまで上がったり、逆に21%にまで下がったり。要は、分からない、というのが本音。

そのなかで、ドル円相場だけが、104円台の円安方向に振れた。但し、米国が労働者の日の3連休に入る直前なので、ポジション手仕舞いによる振れと見られる。結果だけ見ると、ドル高円安、金高になっている。金市場は、利上げ遠のく派。(一時1300ドルすれすれまで急落したが、結局1320ドルまで戻した。)外為市場はいよいよ利上げ派。(一時102円台もあったが、結局104円台で暫時収まった。)市場の反応もバラバラだ。

ゴールドマンサックスは、9月利上げ確率55%と見ている。ラッカー・リッチモンド連銀総裁も、雇用統計発表後に、9月利上げ賛成と述べている。この人は、元々タカ派だけどね。さて、イエレンさんとフィッシャーさんはどうなのか。何か発言があれば、かなりインパクトがありそう。いずれにせよ、今日はNY3連休なので、本戦は明日日本時間火曜日夜のNY市場オープニングから。毎年、労働者の日の3連休が終わって、いよいよ本格的秋相場入りだからね。それにしても、マーケットは一年前にハシゴを外された苦い経験が忘れられない。昨年夏も、FRB高官たちが、利上げをやるぞやるぞと語り、結局9月に利上げには踏み切れず12月利上げとなった。市場とFRBのコミュニケーションがギクシャクしたままだ。

そして、今朝のニュースで注目は、ドイツ。メルケル首相が、地元州議会選挙で敗北決定的となった。これは英EU離脱に次ぐ大事になる可能性を秘める。メルケルさんのCDUが前回比マイナス4%で19%しか獲得できず第三党に転落。SPDも5%マイナスで30.5%。いっぽう、反難民、反イスラムを掲げた新党AFDが、0%からいきなり20.9%で第二党に躍進。なにせ、メルケルさんのお膝元でこの結果ゆえ、ピンチだね。ただ、彼女以外にドイツの首相候補は事実上存在しないから、まず、首相交代はないと思うけど、英EU離脱も、まず無いと思って外したからね。油断できないよ。

さて、昨日日曜日は広島で中國新聞主催の親子で考えるセミナー。札幌、仙台、新潟、静岡、名古屋、大阪、福岡、そして広島と日本縦断展開中。広島でも、普通の投資セミナーにありがちなムンムンとした儲けよう的な雰囲気が無くて、家族的な和やかさの中で、セッションが展開された。参加者が実に真面目で真剣。だから、こちらも話し甲斐があるというもの。当日の中國新聞に、利上げやらG20やらヘリコプターマネーなどの記事が載っていたので、そのニュース解説から始まって、初級者編、中級者編、そして、中締めのあとは、ステージから降りて、個別の質問を受けた。アッと言う間の3時間近く。

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それにしても、私が「クロダさんもピンチで。」と語り始めたとき、なぜか、会場の雰囲気がおかしい。ハッと気が付いた。今、広島はカープ優勝モード一色(笑)!クロダさんといえば、広島では中國新聞のスタッフでさえ、黒田投手を連想したとか。いやはや、現地の空気が読めていない私でした。反省です(笑)。

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夜の部で、居酒屋に行ったときに供されたお造りの写真。なんと、ミニトマトもカープの帽子。カープ坊主とかいうキャラクターもブレークしているし。いま、日本で、財布の紐が一番緩いのが、広島じゃないかな~~~。

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なお、G20は、各国首脳の神経戦。

オバマ大統領機が着陸したとき、赤絨毯が敷かれず。「ここは中国の空港だ!」

プーチン大統領は、ウクライナ問題で、国際社会から村八分状態だから、ここぞとばかり、個別首脳外交を展開。

メイ新英首相はデビュー。「もうEU離脱が戻ることはない。」

メルケル首相は、州選挙敗北で、浮かぬ顔。

習近平主席は、議長席におさまり、「開会を宣言します。」と、すっかり、国際社会のリーダー気取り。特に、国内向けには国威を示す恰好のPRの場だね。ここで、国民に痛みを課す構造改革に本気で取り組むのか。私は、結局、輸出・公共工事依存の経済成長に依存せねば失業増・社会不安などで立ち行かないと思う。例によって、G20期間中は、現地の市民は一時退去を命じられ、青空が戻るが、終わったら、また元に戻るよ。華々しく打ちあげられる花火を見る観客市民もいない。なんとも不自然な景色が展開されている。

2016年