2016年12月6日
北イタリア、ヴェネト州のヴィチェンツァ(Vicenza)といえば、世界の金宝飾製造業の「聖地」だ。毎年開催されるヴィチェンツァ宝飾展には世界中から有力業者が集い、現地メーカーとの商談を行う。
今回、筆者がイタリア現地視察にヴェネト州を選んだのも、同地域の宝飾メーカー社長からの悲痛なメールがキッカケだった。
グローバリゼーションの波は、この伝統産業地域をも容赦なく直撃。いまや金宝飾品製造拠点の多くが、トルコ・インドネシアなど新興国に移転した。
地元の歴史ある銀行バンコ・ポポラーレ・ディ・ヴィチェンツァも、御多分にもれず、多額の不良債権を抱えた。
その社長が祖父の代から主要個人資産として保有していた同銀行株式も「紙くず同然の値」になり、今や家計は火の車だ。
ヴェネト州といえば、イタリアでも有数の経済力を誇る地域である。アパレルのベネトン、サングラスのレイバンなど多くの世界ブランドを生み出した。ワインでも「ヴェネト」の人気は高い。
その地元経済を代々支えてきたのが、同銀行とヴェネト・バンカであった。いずれも19世紀に設立されている。
「先祖からつき合いの続く銀行で、いつでも笑顔で貸出に応じてくれた。持ちつ持たれつ。その銀行の株式を、預金感覚で、主要家計資産として保有することは当たりまえの事と父から言われた。それが、まさか、こんなことになろうとは。」
社長は未だに信じられないという様子で語る。
その銀行株が上場されておらず、経営幹部の判断により会計年度の株価が設定される未公開株という認識も金融リテラシーも無かった。
当座の資金を捻出するため、その銀行株の一部を売却しようとしたら、ローンを提示されたという。株式とローンのスワップである。これが、イタリアの地方銀行では、経常的に行われていた。
貸出の条件に、貸出金の一部で、同銀行株を購入する商習慣も広範に普及していた。
「事業は行き詰まり、手元に残ったのは、紙くず同然の銀行株と、ローンだけ。」と社長は嘆く。
そして、憤りのはけ口は政府に向かう。
「銀行監督当局は何をしていたのか。」
その銀行問題にメスを入れ、改革に取り組む姿勢を見せたのがレンツィ首相であった。
しかし、EUは公的マネーによる銀行救済を禁じているので、改革の痛みを感じるのは、銀行株を預金感覚で保有していた個人となる。社長の怒りもレンツィ首相に向けられた。
「今の首相はEUの手先だ。我々、地元の声を反映する制度のどこが悪いのだ。そもそもイタリアは都市国家の集合体だ。だから、国債より、地元の銀行の発行する株や債券を保有してきたわけだ。」
ちなみに、ヴェネト・バンカの元CEOは、現在、起訴され軟禁されている。銀行不安が噴出した当初は、ヴェネト州知事が、地元銀行への支持がこの州の独立性を守ると説いたそうだ。
更に、両銀行とも、2014年の欧州銀行ストレステストは合格している。現在は、両銀行の合併話が地元の雇用を奪うという噂も流れているそうだ。
昨年、年金暮らしの老人が、銀行劣後債保有で10万ユーロを失い自殺した事例がタブロイド紙を賑わせたこともある。
昔は良かった、と長話は続き、その晩は、社長宅に泊まることになった。もう冬の底冷えが厳しい北イタリアの風土で、プロシュット(生ハム)とパルメジャーノ(チーズ)をつまみに飲むヴェネト・ワインは、地元では安価なれど至極の味だ。
しかし、外の風は荒れ模様。
翌朝は投票日。社長の車で投票所に向かったが、不正投票撲滅のため、警戒がことのほか厳しい。投票から車に戻った社長は、「勿論NO(改革反対票)さ。」と胸を張った。
そして、旨い物写真。
欧米で枝豆。EDAMAMEになって、オシャレな日本食に(笑)。
そして、ロンドンのアルゼンチン牛肉ステーキハウス。アルゼンチン版のシュラスコかな。400グラム、ペロリ。肉体的に疲れていると、肉食系になるね~~(笑)。
それにしても、ロンドンはバブル。
このステーキハウスも、ワンフロアーが全て空きテーブル待ちのバーになって、超満席。ボディコンの女性も多く、まさに、懐かしいバブル時代の六本木みたい。街中も人人で溢れかえっているし。不動産バブルで市内、1DKマンション70平米が1億3千万円相当!これがEU離脱する国かよ~~。