豊島逸夫の手帖

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「プロには反省が足りない」

2016年11月22日

以下は、日経ヴェリタス筆者コラム「逸's OK!」原稿の採録です。

日曜の朝は近所の喫茶店でじっくりヴェリタスを読み込む、という本欄お馴染みの熱烈読者の御仁が怒っている。

「株も為替も、ヴェリタスに登場するプロたちは頻繁に予測を外しているのに、説明責任を果たしていない。レンジの出し方もイージーだ。円100円なら98~102、110円なら108~112、120なら118~122。その程度のことなら、私だって言える。しかも、ハウスビュー(所属する会社の公式見解)を語らねばならないから、サラリーマン的配慮がにじみ出る。」

熱烈読者だけに、求める情報のレベルも高いのだ。

かくいう筆者も耳が痛い。

ただ、プロとして「言いっぱなし」は無責任と常日頃感じているので、予測が外れた場合の「反省セッション」も行っている。

日経CNBCで、月に一度、30分番組で各セクターの予想を語り、次週は、その反省をする番組内コーナーも設けた。これが大当たりで、ダウンロード回数が一回5000を超えた。通常、その番組のダウンロードは100回程度だったので、視聴者がいかに、プロの反省の弁を聞きたがっているか痛感したものだ。残念ながら、この番組は、なぜか打ち切りになったので、他の機会を模索したが、なかなか実現しない。局も尻込みするし、他のプロも所属企業の看板を背負っているので、カッコ悪いことは出来ないのだ。そこで、筆者のブログで、為替予測を公開して、外れたら、豊島&アソシエイツ主催で、「反省セミナー」を開催すると約束した。読者の反響が非常に高かったことは、云うまでもない。

そもそも、日本のメディアは、この種の情報発信に対して、気を使い過ぎ、丁寧に収めようとするきらいがある。テレビ経済番組でも、台本が秒単位の進行で予め決められ、とにかく、その予定通りに終わることが優先される。ところが、米国は、台本などなく、打ち合わせも数分。いきなり、本番で、ガチンコの語りとなる。筆者も米国の経済テレビ番組に三回出たが、本番中次々に反論が容赦なく飛び出し、エキサイティングなセッションであった。人気経済番組の「Fast Money」では、レギュラー出演者が前週語ったことが外れると、まず、その場面もビデオを再生して見せ、次に、その本人の顔を大写しにして、反省の弁を語らせる。

日本の場合、関西系の局で、云いたい放題的な番組があるが、受け狙いで笑いを取るので、米国とはかなり異なる。

とはいえ、米国でも、一般投資家のプロへの不信感が強まり問題化している。特に、英国EU離脱を、プロ全員が外したので、フィーの対価として情報・アドバイスを提供するコンサルタント契約が相次いで打ち切られた。クリントン氏の新Eメール発覚で、投資家の混迷感は更に高まっている。

どんなに高邁な議論を語っても、投資は結果が全て。通常メディアに流れるのは、説明することを本業とする人たちによる後講釈である。

筆者も、色々工夫をこらし、例えば、予想レンジも、為替であれば、95~100円というように、方向性を明確にするため、あえて極端なかたちで提示している。100~105円、せいぜい99円程度で出しておけば無難だ。でも、自論を示すために、敢えて、一定方向に偏った数字を出しているわけだ。勿論、予想発表として安全策ではないから、外れる確率も高まる。しかし、投資家が求めているのは、本音を明確に表すことだ。独立系だからできることと、よく言われる。

要は、アニマル・スピリッツを刺激して、読者・視聴者を投資に駆り立てるスキームが求められているのだ。

というわけで、反省セミナー、準備中!今年はスケジュール、ビッシリなので来年になるけどね。100名くらいの会場だから、すぐ埋まりそう。。。(笑)

さて、今日の旨い物写真。

白魚のカルパッチョ。黄色の点が柚子ソース。緑の点が、セロリソース。茶色がバルサミコ。柚子ソースが特に合ったな。

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そして、釧路湾の牡蠣、「仙鳳趾」(せんぼうし)。ふっくら大きくて、濃い味が絶品。

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三番目は、黒トリュフと色々なキノコのパスタ。香りが勝負。

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日本のイタリアンは繊細だよ。

それから、昨日発売の日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」には「トランプ・ラリーはオープン戦にすぎない」と題して、あの大統領選挙の当日に〆切時刻と戦いながら書いた原稿。ヒヤヒヤもの(笑)だったけど、まぁ、鮮度は保てたかな。月刊誌の原稿は校了から発売まで10日もあるから怖い!10日で世界が変わるからね~~。

そして、最近、ツイッタ―@jefftoshimaで、リアルタイムな情報を発信している頻度が高くなった。↓

https://twitter.com/jefftoshima?lang=ja

2016年