豊島逸夫の手帖

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NYで書いた原稿

2016年7月27日

今日は、日経マネーの筆者コラム「豊島逸夫の世界経済深層真理」前月号分を以下採録する。↓

マンハッタンは一番街のこじゃれたカフェで本稿を書いている。

通り雨もあがり、夕方に吹く風が肌に心地よい。

午後は、年金関係者10人ほどと歓談していた。

今日の話題はなんといっても大統領選。そして、日本からの友人ということで、日本経済へと広がった。セルサイド(販売業者)ではない立場からの、本音の意見を求められる。筆者から見れば、後輩、あるいは、同僚の子息たち。「君のおむつ姿の写真を持っているよ。」といえば、肩書きは「エグゼクティブ・ディレクター」でも、普段の飾り気は棄てた話になる。

一応周囲からは「エリート」扱いされている人物が、「心情的にトランプ支持の気持ちは理解できる。」などとボソリと呟くと、少々ドッキリする。かと思えば、「日本株に興味ある。」とのことで、消費増税再延期・アベノミクスについて詳しく問われると、「本気度」を感じる。

筆者がカルパース元CEOの元で6年ほど働いたときに知り合った仲間からは、日本の機関投資家動向について、あれこれ質問された。ウォール街でも、日本株担当者ならいざ知らず、一般的には日本に関して断片的な情報に基づく現状認識に留まる実態を痛感する。ここはキッチリ説明したいとの思いで、こちらの話もついつい長くなる。

日本にいるとアベノミクスのアラばかりが目につくので悲観論に走りがちだが、NYから改めてグローバルな視点で見直せば、どの国も経済構造問題をかかえている。中間層の危機意識、人民迎合的な風潮が強まる背景は共通だ。そして、どの国でも結局、構造改革で選挙は勝てない。政治的に後回しにされる。

経済的には「長期停滞」「経済成長の鈍化」が世界の潮流だ。国際分散運用も円相場も、結局は相対評価ということを実感する。「弱さ比べ」という表現が印象に残った。

「他国に比し、産業基盤は堅固といえる日本が、高速度取引の投機マネーで荒らされている」。いかにも長期マネーの代表格である年金サイドらしい見方には思わず頷いた。

かと思えば、「日本の参院選を見ていると、沈みゆくタイタニック号のなかで、乗客たちが責任者は誰だと騒いでいるようだ。」との辛口コメントが心に刺さった。

そして、米国の選挙については、「ウォール街ではトランプ支持派が増えている。最大の理由は、金融界では不人気のドッドフランク法を廃止すると述べているから。」たしかに、金融改革法で、金融機関のリスク管理が厳格化され、コンプライアンスにがんじがらめ。自己勘定部門売買は規制されトレーダーは解雇され、リストラの嵐だ。その反動なのだろう。

そこでクビになったトレーダーたちが、ヘッジファンドや政府系ファンドに拾われている。今夜は、そのファンドの友人たちから、本音トークのディナーに招待されている。

明日は友人の著名投資家ジム・ロジャーズ氏がたまたまNY出張中ということでおち合うことになった。原油動向も気になるので、NYMEXにも立ち寄る。フロアーは今年いっぱいで全面閉鎖とのことで、ゴーストタウン状態だが、電子取引は活況だ。

やはり現場の空気を吸ってみないと実態は把握できない。エクセルシートに並ぶ数字とにらめっこしているだけでは限界があることを改めて感じている。

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その大統領選だが、今週は民主党大会。

サンダース支持派の熱狂的な光景に驚く。

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民主党大会直前にヒラリー当選誘導疑惑が暴かれたりして、ヒラリーへの反感を煽る結果に。

まるで、サンダースが民主党候補みたい。この反ヒラリー票が、トランプに流れるのか、あるいは、棄権に回るのか。。。

反TPPも根強いことが分かる。

支持率も、トランプ支持が僅差で上回る激戦。民主党大会終了後は、民主党支持率が上がるだろうけどね。しかし、英国民投票サプライズの記憶も生々しく残り、「まさか」が起きても不思議はない。その「まさか」が起きるとマーケットは大荒れになるだろうね。はっきり言って、どうなるのか、見当がつかない。

2016年