豊島逸夫の手帖

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トランプ氏勝利、どこまで進む円高株安金高

2016年11月9日


あまりのことに、バタバタです。
今夜、ワールドビジネスサテライトにビデオ出演します。


さて、本稿。
調査機関の予測が、英EU離脱に次いで、またも、外れた。ウィスコンシン州をトランプ候補が取るシナリオなど共和党でさえ見込んでいなかった。

ヘッジファンドなどの投機マネーは、クリントン氏勝利を見込んだドル・株買いポジションをひっくり返している。これまで模様眺めを決め込んでいたマネーも、日本時間中から新たな円買い、株売りを一斉に始めた。特に、これで12月利上げの可能性が混沌としてきた。これまで、米国経済が回復基調の中で、トランプ・リスクが唯一といっていいほど、利上げを躊躇させる要因と見られてきた。
更に、来年の利上げも見通しがつかない。トランプ氏は、イエレン氏更迭を唱えてきただけに、FRBの独立性そのものが問われる事態になりそうだ。
それゆえ、円買いも、短期売買のみならず中期的に加速する可能性も強い。グローバルマクロ系のヘッジファンドの一部は、ターゲットを95円程度と見込む。金は1400ドル視野に。
欧米年金基金など長期マネーも、プランBとよばれる、トランプ氏勝利シナリオに基づく運用に切り換えを強いられる。
株式については、日経平均14000円程度まで下がる可能性あり。ただ、減税・インフラ投資など買い材料もある。ドル安進行も米国株には追い風だ。金融規制も緩和されるかもしれない。株価指数先物の売りが先行するだろうが、長期マネーは銘柄選択傾向を強めることになりそうだ。
英EU離脱のときもショックに対する初期反応は強かったが、一巡してからは小康状態に入った。今回も、同様の展開が見込まれる。


実は、この原稿書く前の午前中に書いてボツにしたのが以下のとおり↓


世界の目は米国、市場の目は日本


「日本株と円の反応をチェックしたい。今日は在席か?」
NYのヘッジファンドたちから、スタンバイを依頼されている。
日本市場は、米国大統領選の影響を、世界で最初にまともに受ける巡り合わせとなった。
クリントン氏勝利を織り込みつつ、株やドルを買った一部のトレーダーたちのなかには「噂で買って、ニュースで売る」目論みも透ける。
クリントン氏勝利が確定すれば、アルゴリズム取引は一斉に株・ドル買い・円売り注文を発動するであろう。そこで、クリントン氏勝利の噂で買った株・ドルが急騰する中で、一足早く利益確定の売り手仕舞いで一稼ぎとの思惑だ。


市場のクリントン氏に対する不信感も根強い。例えば、ワシントン・ポスト/ABC調査で、どちらが正直者で信頼できるか、との問いに対して、トランプ氏46%、クリントン氏38%となっている。米国人にとってオネスト(正直)ではない、という表現は、強い意味を持つ。特に、トランプ氏と比較して、正直ではない、という結果は衝撃的だ。
そこで、クリントン氏勝利のインパクトも、賞味期限は短いと読んでいるわけだ。
市場がクリントン氏勝利の高揚感で急騰しているとき、静かに売り手仕舞うのが、プロの腕の見せどころともいえる。天井で売り抜けることなど、はなから望んでいない。

これが、NY市場最前線の生の声。
個人投資家は、市場の初期反応に惑わされてはいけない。
プロの真似をして一儲けに動いても、得するのは、手数料稼ぎの業者である。

2016年