豊島逸夫の手帖

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トランプ・リスクの呪縛、市場を揺らす

2016年11月2日

中国製造業PMIは51.9と2年3か月ぶりの高水準。米国ISM製造業景況感指数は51.9と前月比0.4ポイント増加。開催中の11月FOMCで、利上げは考えられないが、12月利上げは確認されるだろう。そんなシナリオが、一気に、ひっくり返った。

米国ABCとワシントン・ポストの世論調査で、トランプ氏支持がクリントン氏支持を遂に上回る逆転現象が発表されたからだ。1日付け本欄では、先週から両者支持率の差が徐々に縮小して、新Eメール発覚の当日には1ポイント差となった過程に言及した。それが、1日にはトランプ氏46%、クリントン氏45%となったのだ。

NY株は一時200ドルを超す下落。円高も進行して104円台の攻防を演じた。

市場の不安心理を映すVIX指数も、新Eメール発覚当日から、連騰している。今週も13台から始まり、1日には一時20台を突破する局面もあった。

12月利上げ確率も、1日は68%と、前日の72%から下落している。海外要因の中国発指標も、国内景況感指標も好転しているのに、利上げ確率が下がった要因は、大統領選の不透明感に尽きる。

特に、ヘッジファンドなどが注視するのは、コミーFBI長官の言動だ。28日に突然記者会見を開き、Eメール問題再捜査を発表した。市場にとっては、青天の霹靂。全く想定外だった。このトラウマを引きずる市場は、大統領選挙当日までに、再捜査状況の進展、或いは、新たな問題メール発覚などの爆弾発言を警戒しているのだ。いまや、大統領選の結果に最も強い影響を与える人物は、FBI長官だと揶揄されるほどである。

円相場は、日銀金融政策決定会合をスルーしたが、欧米時間になって、この報道をキッカケに円高に転じたかたちだ。

大統領選当日まで、円相場は、トランプ・リスクの呪縛から逃れることは出来まい。

なお、大統領選挙を巡る不安感は、原油市場にまで波及。リスクオフで原油が売られ、それが、更なる株安円高を増幅するという負の連鎖も見られた。

このようなリスクオフモードの中で、金は1290ドル前後まで急騰。プラチナも連られ大幅高。1000ドルの大台に再接近中。

大統領選挙まであと6日。

市場は、日銀金融政策決定会合やFOMCより、トランプ・リスクを意識せざるを得ない。

ABC/ワシントン・ポスト世論調査結果


VIX指数、上昇傾向

2016年