豊島逸夫の手帖

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金融政策不信を映す円高

2016年6月17日

FRBイエレン議長への不信感が市場で高まっている。
ハトになったりタカに近づいたり、かと思えば、またハトに寄るかのような記者会見での言動。全て「データ次第」ゆえ、と言ってしまえば、それまでだが、さすがにマーケットも焦れてきた。「データ次第」で決めるということは、利上げに対する姿勢がクルクル変わる、ということなのか。中国発世界同時株安や英国EU離脱リスクが顕在化すれば、利下げ先送りの理由として「海外要因」が強調される。雇用統計が急激に悪化すれば、前回は「強い改善」とされた雇用が「鈍化」と表現される。
結局、イエレン氏は優秀なエコノミストだが、「利上げ」という経営者的決断は苦手なのではないか。「決められないFRBの長」に対する不満が、ドルへの不信任票、即ち、ドル売りを誘発している面も否定できない。

そして、昨日の黒田日銀総裁記者会見中に円相場が104円台から103円台にまで急騰した事実も、市場の日銀不信を映す現象と理解できる。
その時、特に為替に言及したわけでもないのに、ヘッジファンドの投機的円買いに対抗して売り向かう市場参加者はいなかった。
「裸の王様」は自らの姿を認識していなかったが、日銀は、自らの台所の実態を認識している。有効な切り札はないゆえに、ヘリコプターマネーのごとき極論が生まれる。
しかし、財政政策には規律が、金融政策には節度が求められる。
記者会見で、正面きって、ヘリコプターマネーについて問われれば、否定するのは当然だ。
ただ、同じ否定でも、イエレン氏は「あくまで極端でアブノーマルな状況に陥った場合」との厳しい条件つきで答え、頭ごなしに否定しなかった。もし、黒田日銀総裁も、同様の言い回しで「クロダ・サプライズ」を匂わせるだけでも、円高に多少なりとも歯止めをかけることは出来たかもしれない。要は、アカデミックな賛否両論の議論が広く展開されるだけで、市場は、ヘリコプターマネーという緊急措置も追加緩和の道具箱入りと見做すのだ。
ただし、正論は、あくまで財政政策と金融政策の「ポリシーミックス」であり、両政策の「一体化」ではない。

かくして、FRBも日銀も綱渡りを強いられる中で、英国EU離脱を問う国民投票当日に、円相場がどの水準にあるか。
仮に、100円大台視野に23日を迎えると、日本時間24日はアジア時間帯から、大荒れとなろう。
そうなれば「秩序ある」相場とは言い難い。
ポンド防衛、円高急進阻止のための、ポンド買い・円売り介入も、現実味を増すことになろう。

さて、昨日は怒涛の一日だった。
終日バタバタで、やっと仮眠をとろうと思ったら、寝床を猫が占拠してた。

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猫は習性があって、同じ寝床でも、自分で決めたスポットがある。そのスポットで、私が寝ているとミャァミャァ鳴いて、自分の占拠権を主張する(笑)。

それから、来週月曜日20日のBSジャパン、日経プラス10に夜10時から生出演する予定。
問題は花粉症。
NYに季節外れの花粉が舞っていて、現地スタッフにも花粉症が酷いのがいて、私も、花粉アレルギーなのでグシャグシャになった。
最初は鼻水。そしてクシャミ。咳。声も枯れてくる。
現地ロケでも、カメラの前で喋っているときに、咳が止まらなくなり参った。まさか、NYで花粉なんて、まったく想定していなかったので、不意打ちをくらった感じ。薬も持参せず。
というわけで、テレビ生出演中も、ごほごほ、ずるずる状態(笑)になりそう。うっかりティシューで鼻かむと、以前の話だけど、ヒゲにティシューが絡みつき、益々事態が悪化したこともある。

2016年