豊島逸夫の手帖

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FRBの「日本化」?イエレン氏、株購入示唆の波紋

2016年10月3日


イエレンFRB議長が、金融政策の新たな手段としての、中央銀行による株購入も検討の可能性を示唆したことが、市場で注目されている。
「他国同様に、我々も、長期国債など安全資産購入の限界に達したときは、消費行動に直接リンクする資産価格の形成過程に直接介入できることは有益と言える。」
「株や社債購入には良い面がある。一方、コストもある。この策が、今、必要とは思わない。」
これが、カンザスシティーのフォーラムにおける質疑応答でのイエレン発言要旨である。
時系列的には、8月26日ジャクソンホールの中銀フォーラムでも、「将来の政策担当者は、より広範囲の資産購入の可能性を新たに考えるべき。」と発言していたが、これは、あくまで理論的な話であった。


更に、29日の議会証言では「FRBは株購入を禁じられている。議会がこの法律を見直せば、可能になる。」と問題提起のごとき発言をした。
そして、30日には冒頭のかなり踏み込んだ発言に至ったのだ。


いっぽう、欧州では、ECBも、資産購入対象を社債から株ETFに拡大するのではないか、との観測が一部にはくすぶる。ABN AMROは「スキームとしては日銀の事例がモデルになる。総額2000億ユーロ相当に達する可能性がある。」と試算した。
但し、ECBに関しては、「ECBが否定していない」程度で、あくまで市場の予測であるが、FRBは議長自らが具体的に言及している。


そこで、NY市場の反応だが、日本のように、即「熱烈歓迎」とはならないようだ。元々、民間市場への介入を嫌う傾向が強く、結果的に生じる価格の歪み、そして、出口戦略など、慎重論が目立つ。
ただでさえ、FRBプットと呼ばれ、「困ったときのFRB頼み」の風潮には批判的意見が多いので、新たな公的マネー参入には抵抗感が強い。日本の事例から、「本来安くなるべきときに買えないリスク」を懸念する声も既に投資家からあがっている。筆者の実感としても、NY市場の後場に、当日のFRBの買いが材料視されるような事態になれば、日本より遥かに強い反対意見が語られるだろう。
イエレン氏も、当然、そのような市場の反応は予知したうえで、敢えて言及したところに、新たな政策を模索せざるを得ない苦境が透ける。


FRBの金融政策ツール・キットに残された策は、まだある。
まず、マイナス金利。これについては、本欄9月15日付け「バーナンキ氏、マイナス金利支持に廻る」に詳述した。
そして、インフレターゲット引き上げ。イエレン氏の古巣、サンフランシスコ連銀ウィリアムズ総裁が言及して注目された(8月23日付け「ジャクソンホールが孕む円高進行リスク」を参照されたい)。
総じて、中央銀行の世界では、日銀黒田総裁が次々に打ち出す新金融政策の「進取性、創造性」が注目されている。


そして、ドイツ銀行株価は、和解金1/3に減額報道で、金曜日のNY市場で、一気にショートカバーの買いが入り14%急反発。
この件は、昨日発売の日経ヴェリタス「逸'sOK!」にも詳述したが、和解金問題を乗り切っても、まだ問題山積み。特に、そもそも収益性が回復の見込みたたず。NY株価は「安堵ラリー」だけれど、問題の根源は解決されず残る。金価格は殆ど下がらず、市場の不安感を映している。


そして、今日の写真。
ファイターズ・ケーキ@札幌♪


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札幌の旨い物とくれば、和風なら三枝シェフ(みえ田)、イタリアンなら高尾シェフ(TAKAO)。ということで、両方の店に行ってきました。さすがだね。北海道の豊富な旬の食材を活かした、センス良い品の数々。特に、素材の熱の通し方が抜群だよ。

帰京して、丹波の栗をいただいたので、マガーリに無理言って、シェフの栗ケーキの上に乗せてもらった(笑)。他のテーブルにも、ふるまわれ、大好評。


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渋皮煮みたいな状態にする過程が一番大変なのだと、我が家の製造担当者は強調~~。

2016年