2016年7月13日
追加緩和や大型財政出動を好感して上昇する株価を囃し、買い進むのはヘッジファンドなどの短期マネーだ。米国年金・政府系ファンドなどの長期マネーは、構造改革の痛みを国民が受け入れるか否かを重視する。
参院選自民勝利で、大型財政出動を期待して日本株を買っているのは短期筋。長期筋は、日本の有権者が、本当に、痛みを覚悟して構造改革を支えてゆくのか、という点に注目している。
その本気度を改めて外国人投資家に聞かれると、筆者も、明確にYESと答える自信がない。有権者は、総論、アベノミクスに賛成でも、各論で自分が損すると感じれば、即反対派に転じる傾向があるからだ。
結局、日本株を持続的に支えるのは、ほかならぬ、個人だといえる。
株式投資家であれば、変化の痛みに自ら耐えても、株高というご褒美にありつける。しかし、株価上昇の果実を直接的に享受している感覚を得られない個人は、無力感・不公平感を感じる。
そこで、過渡期の痛みを和らげるための方策として、金融政策・財政政策が位置づけられる。構造改革という大手術に使われる痛み止めである。
しかし、その麻酔が、金融政策という局部麻酔では効かない。或いは、財政政策に関しては、局部麻酔のかけ過ぎが懸念される。
そこで、全身麻酔のごとき方策として浮上したのが金融政策と財政政策の一体化、即ちヘリコプターマネーである。
そこで、しばしば引き合いに出される人物が、偶然にも参院選直後、来日して安倍首相と会談した。
ヘリコプターベン、こと、ベン・バーナンキ前FRB議長である。
孫を連れた家族旅行とのことだが、ホスト国側としては、ほうっておけない。
とはいえ、結局、公式の場でヘリコプターマネーを論じることはなかった。
しかし、同氏のブログでは、明確に、その意義を説いている。
「急激な総需要不足、金融政策の限界、赤字財政に対する抵抗感という極端なケースでは、ヘリコプターマネーも、代替案としては最善かもしれない。完全に選択肢として除外するのは時期尚早だ。」
同時に、「米国では、近い将来、この政策が必要とされる可能性は低い。」と釘を刺している。とはいえ、長期的には米国も、ヘリコプターマネーが必要な状況に陥るかもしれず、敢えて全面否定はしなかった。
今の世界を見渡せば、上記の3条件をかなりの程度は満たす国といえば、やはり、未だデフレからの脱却を果たせていない日本なのではないか。全身麻酔を打たないと、増税やTPPなどの痛みに国民は悲鳴を上げそうだ。
しかし、全身麻酔は、劇薬だけにリスクをともなう。
「ある日、ヘリコプターが飛んできて、1000ドル札を空中からばら撒いた。住民たちは、競って拾いまくる。全員が、こんなことは二度と起こらないと確信している。」
1969年に経済学者ミルトン・フリードマンが「最適貨幣量」に書いたことだ。
勿論、ヘリコプターマネーといっても、空から紙幣がばら撒かれるわけではないが、市場に紙幣を大盤振る舞いすれば、財政規律のたがは緩み、貨幣価値の希薄化が連想される。
それでも、麻酔が切れないうちに構造改革手術が行われるのであれば、たしかに、「選択肢として完全に除去はできない」というわけであろう。
マーケット視点で読む筆者の見解はこうだ。
日銀金融政策決定会合後の記者会見で、ヘリコプターマネーについて黒田総裁が問われたとき、「選択肢として排除せず。」と匂わす程度に答えるだけで充分に効果はあるのではないか。
これまでは、黒田総裁は全面否定してきたが、イエレンFRB議長は、同じく記者会見で問われたとき、「検討したことは事実だが、今は、そのときに非ず。しかし、長期的に可能性なしとせず。」と答えている。
黒田総裁も「なんでもやる」との姿勢を打ち出しているのだから、「そこまでやるかも」と示唆するだけで、本気度は伝わるであろう。
英EU離脱という「まさか」が起きる時代だ。
まさか、という経済政策も、想像の世界に留めおくにしても、現実味は感じられよう。
最近、バーナンキ氏は、自由な身になって、かなり大胆な発言をしている。
今年4月にニューヨークで開催されたフォーラムで、ボルカー、グリーンスパン、バーナンキ、イエレンというそうそうたる現・元FRB議長たちが公開対談したときのこと。
司会者が、FRBの出口戦略について話題をふった。「FRBは量的緩和で3兆ドルを超す債券を買い取りかかえたままだ。これをいずれ放出するときには金利急騰のおそれがあるが。」と問いかけた。バーナンキ氏はすかさず「幸運なことに、私が、それをやる必要はない。」とニヤッとしながら答えた。イエレン氏は間髪いれず「彼が私に遺贈したのよ。」と返し、会場の笑いを誘ったものだ。
今回の日本訪問では、そのような自由な発言はなかったが、いずれ、場所を変えて、日本について語るかもしれない。
構造改革の実現する手段として、ヘリコプターマネーが論じられる機会も増えよう。
マーケットも、この話題から、目が離せない。
そして、金価格は1330ドル台まで想定内の調整局面。
米雇用統計改善、英首相早期に決定などで、市場には安心感が戻ってきた。但し、今年は、EU離脱ドミノ、米国利上げ論争、米大統領選挙、そして中国領土問題など、リスク目白押し。1400ドルへの上昇トレンドは変わらず。
さて、学会で札幌に来ている。
連日、23℃くらいで湿度もなく快適。東京に戻りたくないよ~~。
写真は、今旬の夕張メロン。食いつくとジューシーな水分でビシャビシャになるほど、新鮮取り立て。32階の部屋からの景色を見ながらひたすら食べ続けたよ(笑)。
そして、夜の部は、なんといっても、鮨。ウニが旬。握ってもらうとき、本当に旬のウニは香るから、ノリを巻かないほうが、本当の味を楽しめる。
トウモロコシも甘くていいね~~大きいの小さいの色々。シンプルに焼いていただく。