2016年7月29日
「これだけか。」
追加緩和第一報を聞いた米国ヘッジファンドの反応だ。
ただちに、円買いを加速させている。
市場全般でも、ETF買い入れ拡大にとどまり、失望感が強い。
朝方、消費者物価指数が、値動きの激しい生鮮食品を除く総合指数で前年同月比0.5%下落との報道も流れ、あらためてデフレが意識されただけに、緩和不足と見られている。
外為市場のグローバルな流れは、ドル安だ。
7月FOMC声明文では、「短期リスクが弱まった」ことが明示され、市況の法則としてはドル高に振れるべきところ、ドル安となった。
イエレン氏は、利上げペースについて、基本的に「緩やかで、低水準」という方針を再三強調している。FRBとしてドル高は避けたいとの意向を市場は重視したわけだ。
米大統領選に関しては、クリントン候補はサンダース陣営に配慮して、国内雇用重視のドル安に傾きがちだ。トランプ候補は、保護主義=ドル安志向が既定路線である。更に、混迷の大統領選前の9月に利上げ決断は出来まい。年末まで追加利上げはないとなれば、腰を据えたドル売り・円買いも現実的シナリオとなる。
介入も、米国の理解は得難く、難しい。
ニース、トルコと続いた地政学的リスクは、ドイツにも連続テロ事件というかたちで波及している。有事の円買いが生じやすい市場環境といえる。
東京市場では、27日に、安倍首相が福岡講演で大型財政出動について言及。更に外国系メディアからは50年債発行に関する観測記事が流れたことで、106.50円台まで円安、日経平均は一時400円以上急騰となった。しかし、この円安・株高は一過性に終わり、あらためて、ドル安・円高圧力の根強さを市場には印象づける結果となった。
このように円安がどこまで進行するか試された後ゆえ、市場の流れとしては、次は円高を試す展開となっている。
27日に106円台までトライしたので、今日は102円台を模索しても不思議はない。
28日付け本欄「FRBより日銀に身構えるヘッジファンド」で、「ゼロ回答ならば、投機筋が一気に100円近辺まで円買いを仕掛ける」可能性を指摘した。ゼロ回答ではなかったが、中期的には、100円の大台が試されそうだ。
もはや、ヘリコプターマネーのごとき劇的な措置なくしては、ドル安円高の流れは変えられない様相だ。
ドル安基調を受け、金・プラチナは急騰後も底堅い。1330ドル台と1130ドル台。但し、円高ゆえ、円建て価格は、かなり相殺されている。
昨日は、グリーンライト・キャピタルという著名ヘッジファンドが、顧客向けレターで、4~6月のリターンには保有している金の価格上昇が最大の貢献と記していた。資産運用の実態を示す象徴的事象と見た。