豊島逸夫の手帖

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英EU離脱ショックはリーマン級か

2016年6月28日

リーマンショックの再来か。英EU離脱選択後の市場大波乱について、しきりに議論されている。

結論から言うと、リーマン級の金融システム危機とはいえない。とはいえ、急性ショックではないが、ジワリと慢性化のリスクを孕む悪性の兆候が見られる。

この危機度の違いは、金市場の反応に鮮明に現れている。

リーマンショック時には金価格が1000ドル近くから、700ドル台まで3割近くも暴落した。ところが、今回は、24日当日に1260ドル台から1330ドル台まで70ドルもいきなり急騰している。

前回も今回もショック前に金価格は上昇傾向にあった。

しかし、リーマン時には、世界中のファンドや投資家が先物デリバティブの追加証拠金を支払うために、金の現金化を強いられたのだ。

ところが、今回は、リスク回避のための資産組換えとして金が買われている。金を売れば儲けが出る状況で、いきなり現金化に走ることはなかった。おそらく、市場が安定したところで、利益確定売りが出ると思われる。

この切迫感の違いが、危機度の差を雄弁に物語るのだ。

ショックの「質」を検証してみよう。

リーマンショックでは、大手金融機関の債務返済能力(ソルベンシー)と市場の流動性(リクイディティー)が危機的状況に陥った。

対して、今回は、債務危機ではない。流動性も主要中央銀行による緊急供給の体制は出来ている。

金融機関の体質も、ストレス・テスト、自己資本増強等により、リーマン時よりは耐震構造になっている。

そもそも、強い伝染性を持つウイルスのごときサブプライムのような投資商品が、世界に拡散しているわけではない。

今回の問題の核心は人の心にある。庶民の体制への反発、それに乗じる人民迎合的思想の拡散、孤立主義など排他的傾向。これが、移民問題をキッカケに、英国で顕在化した。債務危機は、債務減免などの急性の痛みをともなう手術により、病巣を除去できる。しかし、思想の問題は、手術的な措置で抑え込んでも、再発しがちだ。ジワリと伝染して慢性化するリスクがある。それゆえ、リーマンショックより長引き、厄介かもしれない。

マーケットでは、24日に高速度取引により円相場が過去最大の7円も変動したことが象徴的だ。どの市場でも、AIとの勝負の様相が強まっている。これは、リーマン時には無かった現象だ。

そして、マイナス金利時代で、市場はイールドの追求に明け暮れている。ゼロ・イールドの金が、ハイ・イールドのごとく言及されるなど、通常の感覚ではあり得ないことだ。

マクロ経済的には、経済成長による拡大均衡から転換して、長期停滞のなかで縮小均衡点を模索することになる。構造的に労働生産性が低迷している。

経済政策面でも、リーマン時より、財政・金融政策の道具箱の中味は明らかに減っている。主要国どの国をとっても、結局は構造改革が必要なのだが、国民に痛みを課すので選挙に勝てないという理由で、先送りされている。量的緩和という非伝統的金融政策の出口リスクも未体験ゾーンとして残っている。

2016年6月24日のブラックフライデーは、後世の教科書に残る日になろう。そこでは、リーマンショックの後遺症が残るなかで起きたレジーム・チェンジと記されるのだろうか。

そして、昨日は24日当日深夜の「朝まで生テレビ!」出演写真を載せたけど、今日は昨日出演した、TBS「あさチャン!」と日本テレビ系列「ミヤネ屋」、先週末OAされたNY現地ロケ番組の写真。

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なお、リアルタイムでツイッタ― @jefftoshima で、色々写真や呟きを増やしている。私のツイッタ―アカウントは、フォロワー:12600人、フォロー:ゼロ、という典型的なリアルタイム情報発信ツール。FBは面倒でやってない。

今週は、プライベートで北海道ゴルフのはずが、英EU離脱ショックで、完全に飛んだね(笑)。積丹ウニ食べて、積丹ブルーの海と黄色のニッコウキスゲの花畑を見たかったなぁ。。

まぁ、こればっかりは、しょうがない。

そういえば、リーマンショックの時も、予定していた北海道ツアーをキャンセルする羽目になったっけ。。。

2016年