豊島逸夫の手帖

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中国債券デフォルト、嵐の予感

2016年5月16日

中国人は金が大好きなので、世界最大の金需要国となっている。なぜ、金選好度がそれほど高いのか。文化的な理由は勿論だが、最近は、「金は誰の債務でもない」というポイントが重要視されつつある。

中国経済は借金まみれで、その返済が覚束無く、銀行のかかえる不良債権や、債券市場でのデフォルトが顕在化しているからだ。

特に、民営化した元国営企業には、日本流にいえば「親方日の丸」的社風が強く残るので、発行した「社債」が債務不履行に陥ると、地方・中央政府の救済を当然のことのように要求している。

直近の例では、「住宅供給公社」のような機関が民営化され、民間のファンドが買収してリストラに乗り出したところ、市場では、同機関が発行した社債が売られ、利回りは急騰した。マーケットは、同社の信用不安懸念で、「不信任投票」を叩きつけたのだ。このまま市場原理に委ねれば、デフォルトは不可避。そこで、同社は、政府に緊急嘆願書を提出した。

「わが社は特殊な任務を持っており、党と国から高い信頼を得ている。しかるに、リストラが投資家に過度の不安を与えている。この状況を安定化してほしい。我が社は破たんすることはあり得ない。これは社会不安を煽りかねないのだ。」


殆ど、党と国に対する脅迫のごとき文面で、救済を当たり前のように求めている。

しかし、政府は、この会社のような半官半民の組織との関係を絶ち、解散を強いて、民間の買い手に委ねている。救済など出来ないとの立場だが、既に怒った投資家たちがデモ行動に走る例も出て来た。まさに、社会不安が生じているのだ。

政府は今更あとに引けない。投資家にデフォルトの痛みを感じて、リスクを分からせねばならない。荒療治ゆえ、民間の反発も覚悟のうえだ。最終的には、いうこと聞かねば、弾圧するのだろう。

そのような状況で、民間の投資家が現物の金であれば、デフォルトもない、と考えるのは当然ともいえる。

中国が国際化・自由化の道を歩むに連れ、国内の安全性を求めるマネーが逃避先を探す現象は今後も続くだろう。

さて、先週金曜日は、本石町の東洋経済社にある「経済倶楽部」で講演。

1930年代から続く伝統ある組織で、約200名の経済人の聴衆が集まった。会場はムンムン。お題は「どうなる円高・原油安・中国そしてマイナス金利」。とても1時間でカバーすることは出来ない大きな問題ばかりだが、例によって、自らの体験を現場写真を交え自由に語るので、「理論派」講演に慣れている人たちには新鮮だったようだ。講演終了後も別室で質問攻めだった。私のほうも、新聞に書いた原稿で校閲によりカットされた話などを話している(笑)。折角集まってくれたので、ネットや雑誌でいくらでも読める話を今更聞いてもつまらないだろうしね。。。

それから、週末洗足池マガーリで食べた旨い物写真。

鰹のバルサミコ和え、鰺のオレンジ風味のカルパッチョ。


新玉ねぎのムース。クルマエビ添え。

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郡上八幡の山菜のバウニャカーダ。


どれも、シェフのセンスが光る。

旬の素材を、こういう調理もあるのかと新発見。

2016年