豊島逸夫の手帖

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ソロス氏批判した中国経済官僚に腐敗疑惑

2016年1月27日

ダボスで著名投資家ソロス氏が、中国経済ハードランディング説を唱え、人民日報が一面で「中国の通貨に宣戦布告?ハ、ハ」(英語版)との見出しで商務省担当者によるソロス氏批判記事を掲載。いっぽう記者会見でソロス批判を述べた国家統計局の王保安局長には、腐敗疑惑との発表。

上海株・人民元不安に対する言論弾圧と腐敗撲滅を象徴するような展開である。

問題のソロス氏外電テレビジョン・インタビューを見たが、「2008年の金融危機はサブプライムが問題だったが、今回の波乱の原因は中国だ。特に膨大な債務がリスク。ハードランディングは不可避。但し、中国は、経済政策・外貨準備などで危機管理が可能だ。問題は、中国波乱が他国へ及ぼすデフレ効果である。」と語っている。実は、中国側の「経済政策で対応可能」との主張には同意しているのだ。更に、同氏の批判の矛先は、中国に留まらず「EUは分裂、ギリシャは未だ問題。」とも語っている。ちなみに、FOMC利上げについて、「利下げもありうる」とも。我が意を得たり。

いっぽう、新華社記事も読んだ。

「中国経済は減速・株安・人民元安なれどファンダメンタルズは健全。中国資本市場が危機的状況として、投機的空売りを試みる輩は、その報いを経験することになろう。賢明な投資家は、中国経済の構造改革をチャンスと捉える。」と主張。「ソロスの人民元と香港ドルへの挑戦は失敗に終わることは疑いない。」と批判している。ところが、ソロス氏は、人民元とも香港ドルとも具体名には触れていない。

そもそも、ソロス氏についてだが、「イングランド銀行を潰した男」の異名を取る人物。アジア通貨危機の時も、マレーシアのマハティール首相が同国通貨リンギットを下落させた人物と名指しで批判したので、敵視されるのだろう。しかし、仮に、彼が人民元売り投機を仕掛けたにしても、「資本規制」が強化されれば、成功するはずもない。

それなのに、英語版の「ha ha」という強がりの表現には苦笑してしまう。水鳥の羽ばたきに怯えた平家を連想してしまった。

中国が言論弾圧で相場を安定させうるという稚拙な発想が、ここでも露わになった。マーケット感覚を持たぬ人材が、党の報奨人事で取引所トップに天下る事例を本欄でも取り上げたが、今回も担当者が素人っぽさを自ら晒しているようだ。市場原理について「勉強中」なのだろうが、授業料は高くつく。そのトバッチリを喰う日本はじめ各国市場にしてみれば、迷惑な話ではある。

中国国民も既に当局への不信感を強め、資本逃避が加速中だ。

当局が、上海株・人民元空売りや悲観的相場コメントを取り締まる事例が増えるほど、個人が資産を海外に移す衝動は強まるだろう。

ソロス氏批判も、中国金融界では、「遠吠え」程度に受け止められていることを筆者は感じている。ただ、国家統計局トップに対する腐敗撲滅はショックだったようで、益々萎縮している。経済成長率・上海株・人民元の話になると、「貝」になってしまう。「ものいえば。。。。」「明日は我が身」のごとき恐怖心なのだろうか。

なお、ソロス氏は、実際の運用からは身を引きセミ・リタイア状態だが、院政ともいわれ健在の様子。民間調査による2015年ヘッジファンド運用実績トップ20のリストでも、ソロス・グループのクオンタム・ファンドが二位につけた。サブプライム危機に勝った男として名を馳せたジョン・ポールソン氏が巨額損失で順位を落としたのと対比が鮮明である。

さて、金プラチナ、続騰中。

原油相場が30ドル前後で、荒っぽいながらも、空売り手じまいが出始めたので、マネーが、荒れた畑(原油)から、手つかずの畑(金)へ一部移動している感じ。

ビックリしたのはNY株の急騰。上海株6%急落しても原油反騰を歓迎してダウ急上昇。値動きが読めない。

今日はブルームバーグ主催セミナー(機関投資家向け)で講演。丸ビル21階で午後。

今週土曜日には、久しぶりに、朝日放送の土曜朝90分情報番組に生出演。世界株安連鎖について20分ほど。さて、どうやって、やさしく分かりやすく語ろうか。思案中。

今日の写真は、鮨屋で出た白魚。

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そして、昨日載せたガーラの豚汁を上から撮った写真。これと、ピザとカツカレー{福神漬け大盛り}が私のスキー食定番だよ(笑)。

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2016年