豊島逸夫の手帖

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原油高でも円高・株安のワケ

2016年4月12日

NYで原油先物価格が再び40ドルを突破した。しかし、円高と株価に対する影響は限定的だ。NY株価など、一時は原油との連動が95%を超えると指摘された。米利上げ観測より原油価格のインパクトのほうが強かったほどだ。但し、それは、あくまで原油「安」との連関であった。11日にNY原油先物価格上昇で一時はNY株も上昇したが、これから発表される企業決算への不透明感が重しともなり、結果的にNY株は下げて終わった。

原油安と原油高の市場に対する影響度には明らかに非対称性が認められる。

円相場にしても、一時は、利上げ観測後退によるドル安と並び、原油安が誘発するリスクオフが安全通貨=円への資金流入を加速させた。しかるに、原油が上昇に転じても、円高には歯止めがかからない。

この非対称性について、NY商品先物取引所のフロアーで働く後輩たちに、直接、疑問をぶつけてみた。

結論からいうと、まだ、原油急落の記憶が強く残っている。今の上げを信じられない。アルゴリズム売買も、売りに反応しやすい。取引所フロアートレーダーも、短期売買に徹している。ここで短期とは、数時間から数十時間のスパンである。

したがって、株価・外為市場の視点でも、トレンドが見えない。

今の原油先物買いも、空売りの買戻しが主体で、40ドル近傍からの新規買いの仕掛けはなかなか出てこない。

それゆえ、持続的原油高は覚束ないので、円高や株価への影響度も、限定的になるのだ。

「アナリストは、原油価格シナリオA、B、Cと並べるだけだが、トレーダーは、その中から特定のシナリオに賭けねばならない。確信を持って、シナリオXと決め打ちして売買することが難しい状況では、超短期売買を繰り返すしかない。」と現場の人間は言い切る。

価格動向を決めるのは、最前線で働くトレーダーたちの決断次第、というのが実態なのだ。

その結果に対して、後講釈で説明するのがアナリストの仕事。

なお、最前線のトレーダーたちが注目する判断材料の一つに200日移動平均線がある。直近の価格は、いま、まさに突き抜けるか否かの微妙な水準だ。昨年からは、一貫して、200日移動平均線を下回ってきた原油先物価格ゆえ、大きく上にブレークしないと、トレンド転換とはならない。

総じて、OPEC、シェール関連から強弱材料が、日替わりで出てくる状況では、まだ方向性は固まらない。

最大公約数としては「40ドルは高いが35ドルは安い。」という相場観がNYMEX最前線では聞かれる。

中期的には、やはり、100ドル台から現水準までもっぱら空売りで儲けてきた記憶が鮮明に残るので、生産凍結非合意などで、一気に売り込まれるリスクが相対的に高い。

NYMEXトレーダーたちに50ドルか30ドルかと尋ねると、圧倒的に30ドルが多かった。しかし、アナリストに尋ねると、五分五分という「保険をかけた」見通しが語られる。

原油市場を取り巻く環境が極めて不透明ゆえ、原油価格動向もトレーダーの決断の重要性が増している。

知識が多ければ相場に勝てるわけではない。

事実、フロアートレーダーの多くは高卒だが、あれやこれや考えず、割り切って決断して実行に移す。

自分が原油の空売りに走っているとき、メディアのインタビューに呼ばれると、表情を変えず強気論を語るしたたかな連中でもある。

エクセルのスプレッドシートばかり見て、相場を語る人たちが、おそらく接することのない世界なのだ。

そして、金は原油と同じく急騰。

一時は、原油安でリスクオフになり金が買われるという異なった動きを見せていたが、原油高になると、素直に金も連れて上昇する関連になる。ちなみにプラチナが200日移動平均線を上回りつつある状態。

NYMEXの写真を添付した。

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そして、今日の旨い物写真♪

マガーリの、イカスミ・リゾット。鴨の和風海苔ソースかけ。

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祇園「らく山」の真薯、桜の葉そえ。

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そして、お造りの真ん中にあるにこごりは、なんと、タケノコ。

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おいしいものを食べてるときが、一番幸せだな~~。

今日は、古巣の三菱東京UFJ銀行の名古屋にある支店で一般経済講演。

なんか、最近、名古屋が多いのだよね~~。中部経済倶楽部とか、中日新聞の親子で資産運用を考えるセミナーとかね。経済力が相対的に高いのは間違いないね。トヨタは勿論、有数の農業県でもあるし。

2016年