2016年10月18日
今日のは、ちょっと理屈っぽいから、旨い物写真だけ見る人が増えそう(笑)。
市場の関心が極度に12月利上げに集中しているので、FRBは、話を長期スパンの低金利継続にフォーカスしよう、と動き始めた兆しがある。
14日ボストンでのイエレン氏講演では、「ハイ・プレッシャー経済」というキャッチーなキーワードを持ち出して、多少のバブルは覚悟のうえで緩和を継続する可能性を示唆した。蒸気が噴き出さんばかりの高圧釜を連想させる用語だ。黒田総裁の「オーバーシュート・コミットメント」と似た発想だが、消費者物価上昇率がマイナス状態の日本とは異なり、米国では相対的に現実味を感じさせる。
かみくだいてイエレン氏の議論をまとめてみよう。
米国経済が追加利上げに耐えうるほどに回復したか否か、確証に欠ける理由の一つに、ヒステリシス現象が考えられる。総需要不足が、経済のサプライサイドも停滞させる、との見立てだ。リーマンショック以降の経済停滞は、人口動態の変化や労働生産性鈍化だけでは説明がつかない。そこで考えられるのが、長引く景気低迷により需要サイドが委縮しているので、供給サイドの設備投資が手控えられ、R&D部門への企業内資源配分も急減していることだ。
そうであれば、力強い総需要と逼迫した労働市場がもたらす「高圧経済」を一時的に容認することも考えられよう。売上が増えれば、生産性向上のための投資もしやすくなる。労働市場が逼迫すれば、就業を諦めていた失業者たちも戻ってくるだろう。より生産性の高い職業への転職も増えよう。たとえ「投機的行動」による需要増加でも、リスクをともなうイノベーションへ挑むインセンティブを生む環境を醸成する。
このヒステリシス現象を通じた景気浮揚策においては、迅速かつアグレッシブな政策実行が必須だ。短期作戦ゆえ、この政策を止めるときにも、ショックを予防するため、急激な政策転換ではなく、穏やかな緩和が必要になる。
長文の講演原稿だが、総じて、利上げ直前に書くようなコンテンツとは思えない。
利上げを織り込む市場は、真意を計りかね、当惑する。
更に、追い打ちをかけるように、17日には、フィッシャーFRB副議長がNYエコノミッククラブで講演した。
「長期均衡金利」の低水準が長期化していることの分析が主たるテーマであった。
その中で、長期均衡金利を上昇させる手段として、投資家の「アニマル・スピリッツ」を妨げるな、と論じている。投資家が慎重になるので、企業の投資も増えないというわけだ。
利上げは、まさにアニマル・スピリッツを萎縮させるような政策といえる。
こちらも、長文の講演原稿ゆえ、その一部ではあるが、イエレン講演直後ゆえ、市場には「正副議長があうんの呼吸か」との観測も流れた。
常識的な解釈としては、12月利上げに偏りすぎた市場の見方に対して、釘を刺した発言と見られる。
なお、金融政策の新たなツールとして考えられる、インフレターゲット引き上げや、マイナス金利導入については、フィッシャー氏が質疑応答で否定した。
「インフレターゲットを2%から3%に引き上げるのは、年俸10万ドルが不満の人に、15万ドルを目指せ、と励ましているようなもの。」と軽く一蹴している。
いっぽう、マイナス金利については、バーナンキ前FRB議長がブログで支持したが、イエレン現議長は、慎重な構えだ。
しかし、そのイエレン氏も、カンザスシティーでのフォーラムで「FRBによる株購入」について含みを持たせる発言をしている。
この点については、10月3日付け「FRBの「日本化」?イエレン氏、株購入の示唆」と9月15日付け「バーナンキ氏、マイナス金利支持に廻る」を参照されたい。
12月利上げ先送りも、トランプ当選も、今や「テール・リスク」だが、「油断めさるな」「いざとなれば株購入もQE4も辞さず」とのメッセージを市場は噛みしめている。
今日の旨い物写真は、秋の風味。
銀杏もいいね。愛知産がお奨め。
ブームの抹茶が、デザートだけではなく、料理にも入ってきた。