豊島逸夫の手帖

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ノーベル賞経済学者、トランプ氏に苦言

2016年12月8日

安倍首相主催の国際金融経済分析会合にも招かれ、消費増税延期を助言したノーベル賞経済学者が、トランプ次期米大統領を批判している。ポール・クルーグマン教授だが、NYタイムズ紙のコラムで

トランプ氏が空調大手キャリア社のメキシコ移転を阻止したことに関して、反論を展開しているのだ。

「巨大な経済の中で、本件の雇用数は1000人ほどに過ぎない。これを毎週一回実行しても、オバマ大統領が自動車産業救済で創出した雇用数を達成するには30年かかる。同様に、製造業が2000年以来失った雇用を取り戻すには、1世紀かかる。」と書いている。

更に、ツイッターでは「米国製造業は、生産性を高め、雇用者数を減らすことで、需要に答えるのだ。政策で、失われた雇用を取り戻すことは出来ない。これからはサービス部門だ。」と述べている。

機械に奪われた雇用を、一社一社廻って説得して、再創出することは叶わぬというわけだ。

いっぽう、トランプ氏は、相変わらず、米国企業の海外離脱を封じる発言を繰り返している。

「今年の人」に選ばれ表紙を飾ったタイムズ紙とのインタビューでも、同席していたラインス・プリーバス次期主席補佐官に向かってこう命じている。

「ヘイ、ラインス、米国を去るという企業のリストが欲しい。私が自ら各社に電話するよ。一社5分。それで、彼らは思いとどまるさ。分かったかい?」

同インタビューでは、トランプ氏当選後上昇したバイオ関連株について「株式アナリストは私の意図を読み違えているようだ。」とした。同関連株は、クリントン氏の薬価が高過ぎるとの判断により、選挙前は売られていたのだが、クリントン氏敗北により、株価が回復した経緯がある。ところが、同インタビューで「私は、薬価を引き下げる。薬価について起こったことを私は好まない。」と語ったのだ。昨日のNY株はほぼ全面上昇であったが、薬品株だけは、蚊帳の外になってしまった。この事例などは、次期大統領の一言で、トランプラリーに待ったがかかりかねないリスクを想起させる。

未だ就任していない次期大統領が、ツイッターやメディアインタビューなどで、頻繁に情報を発信して、マーケットは、その度に揺れる。更に、特定企業を名指しで非難して、海外進出を思いとどまらせる。それが、自由経済の立場から批判されても、言動は、かえってエスカレートする。

未だ経済政策の内容が明らかになっていない段階で、現在進行形のトランプラリーに乗ってポジションを形成してきたヘッジファンドも、1月20日の就任演説までには、いったん手仕舞うだろう。そのうえで、実際の政策を吟味し、トランプ相場の第二幕が始まることになろう。それまでは、トランプ氏のツイッターを常にチェックしながらの売買となりそうだ。

金プラチナは、顕著な動きがないね。VIX(恐怖指数)も12程度まで下がっているしね。

昨日の社団法人日本経済研究センターのセミナーには200名以上集まり、主催者側もビックリしていました。メーカーなど一般企業で同センター会員会社の人たちが多かったです。

今日の日経朝刊東京面には、12月18日(日曜日)の日経Wアカデミーの告知が出ています。

週末は岡山でセミナーです。

今晩は、丁度、ECB理事会の時間帯にBSジャパンに生出演しています。

http://www.bs-j.co.jp/plus10/

2016年