豊島逸夫の手帖

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ISM円高の衝撃、日銀総括への影響も

2016年9月7日

8月雇用統計後のモヤモヤ感が、6日日本時間午後11時に一気に解消された。発表されたISM非製造業景況感指数が事前予測55前後をはるかに下回る51.4。その瞬間、円は103.40台から102円台前半まで急騰した。今朝日本時間帯に入り101円台前半にまで続騰している。「また、ISMにやられたか。」先週、製造業ISMの悪化が一瞬にして104円台から103円台への円高を誘発した記憶が鮮明に蘇る。

8月雇用統計の非農業部門新規雇用者数が15万1千人という微妙な数字となり、株式、債券、外為、商品各市場の反応が割れ、市場は当惑した。円は104円台の円安方向に振れたが、不透明感は残っていた。

市場の9月追加利上げ予測も揺れていた。雇用統計発表後、20%から20%台後半まで「乱高下」した。それが、6日のISM統計発表後は18%にまで低下している。「これで9月利上げは消えた。」との市場の本音が透ける。「12月まではドル安モード」との認識が拡散中だ。

この円高再燃により、日銀の「総括検証」は益々難しくなった。市場の円高バイアスが強まる中、新たな緩和手段を示唆しても、「窮余の一策」として金融政策の限界が意識され、マイナス金利導入時のような円高急進を招くリスクが高まる。

6日のISM発表に先立つ日本時間では、「日銀はFOMC決定前の追加緩和は控えるべき。」との浜田内閣官房参与発言が外電で流れていた。「日銀の外債購入案」にも言及したことが、市場を更に刺激した。しかし、円高再燃の今となっては、奇策も、欧米市場では金融政策の限界を示す現象とされ、ヘッジファンドの円買い材料にされかねない。今更のように、ヘリコプターマネーが6日の欧米市場では蒸し返されていたが、これとて、ヘッジファンドが「日銀四面楚歌」と囃し、目先の円買い要因として使う目論みだ。

「総括検証」について、量・質・金利の各次元での拡大にせよ、「それ以外のアイデア」にせよ、どちらに動いても、円高のリスクをともなう。浜田参与発言は「FOMC前に動くべきではない。」との意向であったが、そもそも動いた場合のリスクに関する議論も高まろう。

日銀が動いても動かなくても、再び100円台攻防に突入するシナリオも視野に入ってきた。

なお、米地区連銀総裁講演での雇用統計・ISM統計「総括検証」発言も注目されよう。「利上げ」のトーンに変化が見られるか否か。市場は講演原稿の行間を読むことになりそうだ。

ドル安進行で、金もプラチナも20ドル以上の急騰。1350ドル前後と1100ドル前後を回復した。

8月雇用統計後、金市場は「利上げ先送り」を織り込み上昇で反応していた。ドル高・金高の珍現象も招いた。しかし、今は、ドル安・金高である。結果的に円建て金価格は円高分だけ上昇が相殺されることになる。

そして、今日の旨い物写真は、広島の一日一組予約限定のプライベートキッチン。自分たちだけの空間。テーブルの中央に生ビールの蛇口があって、いくらでも好きに飲めちゃう。頗る「危険」(笑)。 トロ鍋、アナゴ茶碗蒸し風、そして、前菜色々。地元の新聞社推薦の店だったが、このスタイルを東京に持ち込んだら、当たりそうな予感。

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2016年