豊島逸夫の手帖

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トランプ圧勝が誘発する円高リスク

2016年2月25日

24日に発表された2月の米サービス業PMIが、前月53.2から49.8に急落した。頼みの綱の非製造業まで、景況感の境目とされる50を割り込んだ事実は重い。利上げ先送り論を勢いづける経済統計で、ドル安(=円高)要因として無視できない。

いっぽう、筆者が、米国庶民が感じる景況感を示す数字として最近注目しているのがトランプ氏の得票率だ。それが、共和党予備選では46%に達した。ぶっちぎりの数字だ。白人層のみならずヒスパニック層の票も獲得しており、幅広く市民の景況感が悪化していることを示す数字といえる。

このトランプ氏の勢いをヒラリークリントン氏も無視できず、新聞への寄稿で「中国、日本、アジア諸国が通貨安により自国製品を安くしてきた。」とまで書くに至った。

アベノミクス開始当時には、「日本の脱デフレは世界経済にもプラス」とされ、急激な円安にもお咎めはなかった。

しかし、今の米国に、それほどの余裕はない。

日銀が万が一、円売り・ドル買い介入に踏み切れば、たちまち日本が「為替操作国」のレッテルを貼られることは必至だ。

かくして、マクロ経済のドル安要因は強まるなかで、投機筋の円買いを抑制する切り札は封印される。ヘッジファンドの円買いは加速する。

なお、23日にはフィッシャーFRB副議長がヒューストンのエネルギー関連会議で講演。「FRBにマイナス金利の計画はないが、本件は研究中。」と語った。イエレン議長も先日の議会公聴会で、「マイナス金利は2010年に検討したことはある。今、必要とは思わないが、選択肢として完全に排除したわけではない。」とした。FRBの実施する銀行ストレステストでも、「最悪の条件」のなかに「マイナス金利導入」が含まれていた。

そもそも、現在のFRBは、民間金融機関がFRBに置いている超過準備預金の付利を引き上げることでFFレート利上げを実施している。にもかかわらず、その金利をマイナスに引き下げる可能性まで研究せざるを得ない。ここに未知の領域をさまようFRBの姿を見る。

それにしても、2016年年初の世界経済見通しは「米国堅調。ドル高基調。」であった。その前提が、2か月もたたぬうちに、崩れ始めている。多くのファンドは、読み誤り、ドル高ポジションの巻き戻しを迫られた。

今後、3月1日のスーパーチューズデーで、トランプ氏の地すべり的勝利が再現されると、更なる円高のキッカケになりうる。

その前に中国で開催されるG20については、円高仕掛け人のヘッジファンドは、軽くスルーの構えだ。プラザ合意級の国際協調は期待できず、せいぜい口先協調で足並みを揃える程度と読み切っている。

そのヘッジファンドの視線は、既に今回の円高ターゲット110円達成後の「出口戦略」に向けられている。3月16、17日のFOMCが近づくと、やはり米国引き締め、日本緩和という金融政策の方向性の違いが意識されそうだ。この基礎的ドル高・円安要因が視野に入ると、円買いの深追いには慎重にならざるを得まい。

金価格は1230ドル台。

この1か月でドル建て金価格は約10%上昇した。

まぁ、世界的に市場がこれだけ不安定だからね。

マネーが金に流入するよね~。

私の年初の見立ては2016年、下値1100ドル、上値1400ドル。その時点では、1100ドル割れていたけど、下値は1100ドルに据え置いた。正解!

但し、円高なので、円建て金価格は、かなり相殺されている。

さて、明日は高松。日経懇話会。

こういう荒れた相場ゆえ、やはり、満員御礼らしい。

皆さん、何かヒントはないか、という思いで来るのだよね。

なお、今朝25日の読売新聞朝刊経済面「経済の現場2016、ファンド、国と神経戦、110円へ攻撃緩めず」にコメントしています。

それから、朝日新聞での、タレント、はなさんとの対談後半はコチラ↓

http://www.asahi.com/and_M/living/SDI2016021995191.html


最後に私の第二の故郷、福島の話。

あの原発事故3日目には、メルトダウンしていたという話。東電、ちょっと、これは、あまりに酷い。

それにつけても思い出すこと。その3日目だったか、4日目だったか、連れられて、高級ステーキハウスに行ったとき。著名元政治家たちのたまり場になっているところなのだけど、震災後、ぱったり客が来なくなったので、ご主人がチェックしたら、なんと、震災後2日目には、その人たち、皆、関西に避難していた。知っている人は知っていたのだよ、実態を。「豊島さん、早いとこ、関西に逃げたほうがいいですよ。」と震災直後からアドバイスする人もいたっけ。

2016年