2016年8月23日
通常、NY市場の「秋相場入り」はレイバー・デイ(労働者の日)の祝日による3連休が終わった週とされる。しかし、今年は暦の関係で、同3連休が9月3、4、5日と通年より遅めだ。いっぽう、その前週、即ち、8月26~28日には、恒例のカンザスシティ連銀主催ジャクソンホール中央銀行会議が開催される。ここで、26日にイエレン議長が2年ぶりに講演するので、マーケットではビッグ・イベント扱いされている。今年ばかりは、秋相場入りが通年より早まりそうだ。NYのトレーダーたちも、夏休みを早めに切り上げ、臨戦態勢に入っている。
勿論、最大の注目点は利上げ。前座というには大物すぎるが、フィッシャーFRB副議長が21日、コロラド州での講演で、「物価・雇用とも改善、目標に近づく。」と追加利上げを示唆するかのような発言をしたばかりだ。その5日後に、ワイオミング州ジャクソンホールでの会議で、仮に、イエレン議長が、フィッシャー副議長の見解と異なり、米経済に悲観的見通しを語ったら、たちまち「FRB内の亀裂」を指摘されるだろう。FRBと市場のコミュニケーションに更なる不安感が醸成されてしまう。とはいえ、米国経済マクロ指標には悪化を示す数値も多く、ハト派イエレン氏が利上げを決断できる状況とも思えない。
そこで、マーケットが注目することが、「金融政策の見直し」だ。黒田日銀総裁の「検証発言」と同様に、世界の中央銀行家たちが、「検証」を議論する場となる可能性がある。
具体的には、インフレ・ターゲット引き上げ。FRBが2%から例えば3、4%に引き上げるという案が取り沙汰されている。その背景には、「長期停滞経済では、物価目標を大胆に高めに設定しないと、インフレ期待が高まらない」との見解がある。中央銀行がインフレ・ターゲットを引き上げるということは、緩和を強め、オーバーシュートして本当にインフレを引き起こすリスクを孕む。しかし、それぐらいのショック効果を与えないと、世界的超低金利傾向から脱却できないとの危機感も強い。
この議論への注目度を高めたのが、15日付け、サンフランシスコ連銀ウィリアムズ総裁の「ニュースレター」形式の論文だ。「経済が減速したとき、中央銀行が利下げできる余地が少ないことが問題。より高い金利水準は、金融政策の自由度を高める。」との議論を展開した。
たしかに、中央銀行家の視点で、ゼロに近い金利水準では、伝統的金利政策が機能しないという不安は強く残る。いっぽう、完全雇用に近づいている現状では、インフレ率のオーバーシュートというリスクも無視できない。
サンフランシスコ連銀といえば、イエレン議長の古巣でもある。仮にも、同氏が呼応してインフレ・ターゲット見直しに言及すれば、市場は、今年利上げ無しくらいの判断に傾くだろう。円にとっては悪夢のようなシナリオで、ドル全面安の煽りをまともに受け、99円、98円などの円高水準が定着しかねない。18日付け本欄「9月に1ドル=95円の現実味」が増す。
なお、日本経済についても、7月にノーベル経済学賞受賞者のクルーグマン氏が、日本は物価を引き上げるためインフレ目標を4%に引き上げるべきとの考えを示している。
現実的には、黒田緩和「検証」において、2%物価目標達成時期を、特定しないという選択肢が考えられる。
ヘリコプターマネー議論が一巡した今、次のトピックは、インフレターゲット見直し、ということになるかもしれない。
さて、以下は、朝日新聞の金対談。お相手は、体育会系の水野裕子さん。
http://www.asahi.com/and_M/living/SDI2016081849801.html
明日、朝日と読売の朝刊で、それぞれ違った金対談が出る予定。
朝日のほうは、この電子版とのコラボで紙面展開。
そして、オリンピック関係。
女子レスリングの吉田選手が、銀で申し訳ないと繰り返し。いやいや、彼女の存在と貢献度は金以上ですよ。貴金属業界で、彼女にプラチナメダル作ってやれよ!製造プラチナ価格が金価格より安いことだし。マジな提案です!