豊島逸夫の手帖

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次の日銀利下げを注視する欧米市場

2016年2月4日

日本株、円相場、両面にわたり、マイナス金利政策第一弾の賞味期限が早くも切れてきた。欧米市場では、既に、次の日銀「利下げ」が材料視されている。

日経平均1万6000円、円115円を死守するためには、日銀が「なんでもやる」であろうとの観測だ。昨日の講演でも、黒田総裁は、更なる利下げも辞さずとの強い意志を表明した。

マイナス金利だけでは相場の流れを変えられないとなれば、次は、合わせ技だ。ETF購入増額、量的緩和の増量。これまで、「もう限界」と言われてきた選択肢も、マイナス金利引き下げと組み合わせれば、柔道の「技あり2本で一本」のごとき効果が期待できよう。やはり、手詰まりと言われた日銀の追加緩和手段が、マイナス金利導入で、「利下げ」の選択肢と得た意味は大きい。

但し、それでも、世界経済の流れは変えられない。

原油価格は、先物投機主導の価格形成が席巻するので、政策的に制御不能状態に陥った。厄介なことに、その原油価格が、今やNY株価に関しては最大の変動要因だ。

更に、米国経済のリセッション懸念が、米利上げ観測を後退させ、外為市場ではドル売りが進行。その結果、円が急騰した。米国10年債利回りは1.9%の大台も割り込んだ。それでも独国債・日本国債の利回りより遥かに高い。したがって、米国債買い意欲も収まらない。

筆者は、今年後半、FRBが再びゼロ金利に戻る=利下げの可能性もありと見てきたが、いまや、FRBのマイナス金利さえ絵空事ではなく議論されるに至っている。

かくして、日銀マイナス金利導入後に、日米金利差が拡大せず、予想された円安の流れが覆された事実は重い。原油安と米国中国経済不安に起因するリスクオフの円買いに相殺されたかたちだ。

ドル高を懸念するイエレンFRB議長は、とりあえず安堵しているかもしれない。とはいえ、今後、利上げ決定にあたり「日銀追加緩和」を新たな変数として考慮せざるを得なくなったと思われる。一過性になりがちなリスクオフ円高が一巡すれば、円安がドル高要因と変身するからだ。更に、FRBの視点にたてば、日銀が追加緩和を続けると、米経済に利上げに相当する引き締め効果を及ぼしかねない。NY連銀ダドリー総裁も、3日、「最近の市場波乱が米国経済見通しに影響を与える」可能性に言及して市場の注目材料となった。頼みの「非製造業」セクターも、同日発表の1月米ISM非製造業指数が53.5となり、低下傾向が顕著だ。

ヘッジファンドからの質問も、「円高の持続性」のトピックが目立つ。現時点では、日本株も円も、様子見の姿勢で、キャッシュポジションを増やしている。

「マイナス金利で円買いポジションをひっくり返し、円売りに切り換えたが、更に損切りする羽目になった。」

ヘッジファンドもミセスワタナベと同じように、当惑している。

なお、欧米年金など長期マネーは、国債発行による資金調達コストが極限状態まで低くなったことで、財政規律が緩むリスクを警戒している。長期投資の視点では、日米金利差より、膨張した公的債務からの出口戦略に不安を感じているようだ。

そしてドル建て金もプラチナも上がってきたね。

ただ、円高に振れているので、円建ては相殺されている。とはいえ、トレンドに変化が見られることを重視。

さて、今日の旨い物写真。

京都、高台寺近くでふと寄ったお店。

白みそ仕立ての温ソーメン。

干し柿と鯛の前菜。

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黒蜜とクルミ入りの餅。デザート。

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軽いランチにピッタリだった。

2016年