豊島逸夫の手帖

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トランプ流金融危機対策は大銀行解体案

2016年7月20日

これも、マーケットでは当世はやりの「まさか」なのか。

長文の共和党政策綱領の中に、土壇場で、以下の一文が入れられた。

「我々は1933年制定のグラス・スティーガル法の再制定を支持する。商業銀行にハイリスク投資を禁じるのだ。」

グラス・スティーガル法は、大恐慌の教訓で、預金を受け入れた商業銀行が証券業務にのめりこんだことが混乱を増幅したとの反省から、銀行業と証券業を分離して信用秩序の回復を目指すことを立法趣旨とした。

しかし、金融自由化の流れで、1999年のクリントン政権時に廃止され、これにより米銀は銀行業と証券業が一体となるユニバーサルバンクとなり、巨大な金融機関になった。

しかし、リーマンショック後、「大きくてつぶせない」規模になった大手金融機関への批判が高まり、一部では、グラス・スティーガル法の復活も論じられるようになった経緯がある。

ウォール街の視点では、同法が復活すれば、大銀行が実質解体され、収益の多くを失うことになる「悪夢」となる。

そこで、トランプ候補は、これまでの候補討論会では触れたことが無かった、同法の復活を綱領に盛り込んだのだ。

ウォール街だけ儲けている、との庶民感情には、共感を得る方策であろう。

実は、クリントン候補も、サンダース議員への配慮から、大銀行解体支持に廻っている。

ウォール街にとっては、どちらの候補が勝っても、収益基盤が大幅に毀損する可能性があるのだ。

仮にも実現すれば、ウォール街の空洞化は必至となるほどのインパクトがある。

一般庶民感情としては、自分たちの虎の子預金を元手に投機的売買で儲かれば、銀行幹部は数十億円から数百億円のボーナスを手にする。もし、投機的売買で大損して銀行経営が揺らげば、納税者マネーで救済される。許せない、との気持ちが強い。

おりから、英EU離脱、マイナス金利などが銀行収益を圧迫している。金融業は「構造不況業種」と揶揄されるほどだ。頼みの中央銀行も、物価水準の安定、経済成長達成、金融システムの安定の3つの政策目標を同時に達成することに四苦八苦している状況だ。

そこにフィンテックの新たなチャレンジが待ち受ける。

銀行業にとって、共和党政策綱領は、「苦い読み物」になった。

それにしても、トランプ夫人の共和党大会での演説は、オバマ夫人とそっくりだったね~。共和党大会欠席の大物議員も多いし、やっぱり、結局はヒラリーで決まりだと思うよ。なんというか、オウンゴールで失点という感じ。

そして21日発売の日経マネー「豊島逸夫の世界経済深層真理」第55回のお題は「英EU離脱ショック6月24日は本震だったのか」。IMFが実名入りで公表した、世界の危険度高い銀行ランキングも。


旨い物写真は、京都の「鱧」。暑い季節感があるね~~。

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2016年