豊島逸夫の手帖

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市場を覆う三大リスクとは

2016年10月11日

9月雇用統計発表後、3人のFOMCメンバーが発言した。

時系列的に、まず、メスター・クリーブランド地区連銀総裁(投票権あり)が、「失業率5%もsolid力強い数字」と評価。9月利上げにも賛成票を投じている、筋金入りのタカ派なので、市場は、「さもありなん」との反応。

次に、フィッシャー副議長が、「9月雇用統計の数字はゴールディロックスに近い。」とコメント。熱すぎず、冷たすぎず、「適温経済」との意味合いである。

そして、シカゴ連銀エバンス総裁(投票権なし)。「12月は(利上げに)適当な時期とは思うが、切迫感を感じているわけではない。完全雇用と同時にインフレ率目標も重要だ。」と述べ、ほぼ中立的といえる発言であった。

この中では、大物副議長フィッシャー氏の発言が市場には相対的に重く響く。12月利上げ観測も、発表直後やや後退したが、その後、再び台頭している。

そして、米大統領選挙候補第二回討論会。

最新のNBCとウォールストリートジャーナルの調査では、46-35でクリントン氏優位。CNNの調査で、トランプ氏が前回の討論会より良くやった、との答えが66%に達したが、それとて、トランプ氏の劣勢を覆すほどではなかった。やはり、直前に暴露された、酷い女性蔑視発言テープのダメージは大きい。討論会でも、トランプ氏は、「あれはロッカールームでのお喋り」としたうえで、話題をISに振り、あたかも「ISよりはマシ」と言わんばかりの発言に反感が強まったようだ。クリントン氏のEメール問題についても、「大統領になったら、嘘つきのクリントン氏を、監獄へ送る。」と独裁国並みの発言で、自ら攻撃の機会を失した。

それでも、トランプ氏の殺し文句は「貴女はこの30年間、何をやってきたのだ。」。ここが、一般聴衆に響く一節だ。クリントン氏が、リンカーンの言葉を引用すれば、「リンカーンは正直だった。」と軽くいなす。やはり、クリントン氏の弱点は信頼感が薄いことと感じさせる。

欧米市場では、総じて、トランプ氏が前回より「大統領らしく」振る舞ったが、あくまで相対的比較。トランプ・リスクは若干後退した程度の反応だ。

それより、マーケットでは先週金曜の日本時間に勃発した英ポンドの「フラッシュ・クラッシュ」(突然の瞬間的暴落現象)のショックが依然尾を引いている。雇用統計、米討論会より、インパクトは強い。英EU離脱のハード・ランディングという意味でハード・ブレグジットという言い回しがすっかり一般化しつつある。

英国が人の移動・移民規制にこだわる限り、英国はEU単一市場へアクセスできず、国際金融市場としてのロンドンは、機能不全となるリスクだ。

市場は、12月の米利上げ、11月の米大統領選より、目先は、ハード・ブレグジットの成り行きを警戒している。ドイツ銀行にまつわる不安感と共振して、欧州発信用不安から目が離せない。救いは、原油価格上昇なのだが、サウジ・イラン・ロシアが果たして本当に減産合意を実行できるのか、市場には懐疑論も根強く残る。

かくして、様々なベクトルの異なるリスクが混在するので、総体的方向感が定まらない。

最も早く決着する米大統領選までは、市場の漂流が続きそうだ。

金価格は1250ドル台。プラチナは960ドル台。上記のリスク要因が悪化すれば、ただちに反騰要因となろう。

そして、今日の写真。

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栗拾い。楽しいね。それを興味津々で見つめる猫ちゃん。

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そして熊本直送の大きな梨(爪楊枝と比較すると大きさが分かるでしょ)。大きくても、大味ではないよ。

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2016年