豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 春節明け前、株安連鎖を止めた二人
Page2018

春節明け前、株安連鎖を止めた二人

2016年2月15日

欧米市場で、「円高」への注目度が極めて高く、VIX指数と並び、市場のリスクオフを表わす指標扱いされていることに、驚いている。

そして、連休前にとりあえず欧米市場の株価が反発した「貢献者」として二人の名前があがった。

一人目はUAEマズルーイ・エネルギー相。

「条件つきながら、OPEC加盟国に減産協力の用意あり。」

米紙が報道した同氏のこの発言が、原油先物価格急反発を誘発した。

但し、原油市場参加者の殆どは、疑心暗鬼だ。

ロシア・サウジアラビアが減産協力か、との報道で、色めき立ったが、結局何も起こらなかったという事例の記憶はまだ鮮明に残るからだ。

それでも、米三連休を控え、原油空売りポジションを抱えたファンドにとっては、「気持ち悪い」ニュースであった。とりあえず、手じまうとのインセンティブが働き、ショート・カバー・ラリー(買戻しによる価格上昇)が起こった。

これに飛びついたのが、NY株式市場だ。

最近のNY株価と原油価格の連動は軽く90%を超える。

世界株安連鎖をNYで断ち切りたいとの思いも強い市場にとっては、恰好の買いの口実となった。

二人目は、ジェームス・ダイモンJPモルガンチェースCEO。

自腹で自社株50万株(2千6百万ドル相当)を購入した。SECへの情報開示で明らかになった。彼の意気に感じたかのように、同銀行株価は12日に8%以上急反発している。ドイツ銀行による約54億ドルの債券買い取りとの発表もあり、銀行株に一定の安心感を与えた。やはり、銀行トップが自腹で自社株買いを実行してみせると、説得力はある。


なお、マクロ経済的には、1月米小売り売上高が前月比0.2%のプラスとなったことが、米国経済景気後退懸念を和らげた。アトランタ連銀のGDP Now も2.7%まで上昇中だ。日本のマイナス成長との対比が鮮明であり、足元でのドル反発・円高頭打ちの要因の一つとなっている。

そして、いよいよ、春節明けの上海市場に世界が注目する。

中国当局は、徹底した、売り封じ込め対策で対応する姿勢だ。

大株主には売らせない、投機的空売りを強くけん制する、売りを薦めるコメントは情報規制する、など力で抑え込みにかかるだろう。

人民元基準値も、対ドルでの人民元レートを発表するのだが、その決定プロセスには、対他通貨含む実効レートを考慮するとしている。要は、極めて分かりにくく、煙に巻いているかのような印象を与えている。この不透明感は消えないだろう。

今日の上海総合株価指数の下落は小幅にとどまっている。「売らせない」との当局の圧力が効いているようだ。

いっぽう、人民元の対ドルレートは春節期間中のドル安トレンドを映し、人民元高となっている。人民元安懸念がドル全面安により、ひとまず薄らいだかたちだが、中長期的には中国からのマネー流出に歯止めがかかったとは言い難い。

先週は中国抜き、今日はNYが休場、ということで、日本時間火曜夜のNY市場になり、初めて全員参加型の相場形成となる。

惨憺たる運用実績にもがくヘッジファンドが、短期決戦で売買を仕掛け、市場を揺らす構造は変わらない。

株価が戻せば、金価格は反落。

1200ドル以上では、中国インドの現物買いも控え気味になる。

日経が14日朝刊一面トップで「金急上昇」と来たとき、「日経が書いたら売り。」wと思ったが、やはり。。。。

2288d.jpg

そして、今日の旨い物写真。

京都のお茶席専門の老舗「三友居」の東京支店にて。

ウニなど海産物が詰まった柑橘類。

2288a.jpg


今年は貴重品の富山県氷見ブリのシャブシャブ。

2288b.jpg

マナ鰹の西京漬けと、ぬた(京都で「いっぱい」とも呼ばれる)和え物。

2288c.jpg


友人に趣味が昂じて自宅に本格的茶室作った元欧米投資銀行幹部が居て、その茶席に招かれたときも、三友居が出張していた。

今回は、証券界の大御所と一緒に。「日銀マイナス金利発表直後の円安・株高を三日天下と看破した」京都の一流店でも「ワンカップ大関」を事前注文する御仁。

2016年