豊島逸夫の手帖

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ドゥテルテ・リスクを探る市場

2016年10月26日

2017年の地政学的リスクとして市場でもドゥテルテ・フィリピン大統領のランダム(予見しがたい)な言動が意識され始めた。

ヘッジファンドとの会話でも、ドル・円・日本株の材料になる可能性が指摘されたりする。思ってもみなかった展開だ。

たしかに、中国の太平洋へのアクセスとしてフィリピン・ルートが浮上したことは米国市場にとって、「ショッキングなイベント」だ。

米国は断固立ち向かうであろうが、フィリピン国内の大統領支持率は高い。不測の事態が起きた場合の市場の反応が気になるところだ。

具体的には、安全性を求めるマネーが、米国債、円、金などの市場に逃避流入するシナリオである。ISやテロ、中東関連の突発的イベントには、免疫が出来てしまったかのような反応だが、ドゥテルテ・リスクは市場の材料として鮮度が高い。

しかも、中国が直接的にからむ問題だ。米新大統領と習近平国家主席の関係構築に当たり、最初の関門にもなりかねない。

ヘッジファンドの視点では、中国とフィリピンの貿易決済に人民元が使われるケースがどの程度増えてゆくか、ということも注目される。北京で今回、中国-フィリピン間で合意された巨額の支援は人民元決済の「ひも付き」も含むのか。東南アジアがドル経済圏と人民元圏のせめぎ合いの場になりつつあるだけに、外為市場の関心も強まる。

更に、人民元に対する信認の問題にも関わる。2016年は、IMFが人民元に対して寛容な姿勢を採り、特別引出権(SDR)に組み入れたが、2017年の注目は、MSCI新興国インデックスに中国株が組み入れられるか否か。これまでも俎上にのぼっては消えてきた問題で、中国の悲願でもある。親米国であった新興国が親中国に転じるとすれば、相互の株式市場の相関度も益々強まる。中国経済リスク発のリスクがドミノ現象を引き起こす市場環境が醸成されつつある。

かくして、米国の政治空白期をついて顕在化したドゥテルテ・リスクは、市場でトランプ旋風の次の台風の目になりかねない様相だ。

足元では、金・プラチナ急騰。

昨日は、米消費者信頼感指数が予想外の悪化。ドルインデックスはゴールデンクロスだが、昨晩は、ドル買い疲れ気味。そして、クリントン氏絶対優勢でも、やっぱり捨てきれないトランプ氏当選リスク。はっきり、トランプ氏当選は無い!と言い切れない限り、市場には、万が一のリスクがまとわりつき、そのヘッジとして金が意識される。原油50ドル割れも、ややリスクオフも株には悪材料。実需面では、今月末がインドの宗教的祭礼Diwali。この祭礼期にインド訪問したが、「金を買うことが縁起良いとされる祭礼時期」なのだ。インド政府は色々金輸入に規制をかけてくるが、文化的金選好度の高さ、つまり、インド人の金への思い入れはそう簡単に変わらない。プラチナ急騰は当然の巻き戻し。

金・プラチナ値差が300ドル以上に再拡大しているからね。

そして、今日の旨い物写真は、北海道訪問中の知り合いから送られてきた釧路の海産物の現地画像。

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特に牡蠣は仙鳳趾(せんぼうし)産。釧路町の東側で厚岸湾の端に位置する産地で、潮の流れが少しきつく、そこで育った牡蠣は身の締まったプリプリ感。殻に対して身が大粒で、強い甘みと濃厚でコクのある味わいが特徴とか。東京では高級料亭限定。現地でないと食べられないね。

2016年