2016年2月9日
とうとう、円高は115円台に進行。日経平均も1万6千円攻防が視野に入る。ここを突破されると、円安・株高路線への回復には、かなり時間を要する。
8日の円高は、欧州発であった。欧州時間に、117.50近傍から円買いの仕掛けが波状的に市場を襲い、一時は115円ギリギリをつける局面もあった。そこから、さすがに戻しているが、大台の数字は115円である。
発端は欧州株急落であった。特に、マイナス金利による業績悪化が顕著な欧州の銀行株への激しい売りに歯止めがかからない。更に、NY原油先物市場で原油が再び30ドルを割り込んだことが、NY株のセンチメントを悪化させた。
全て、東京市場終了以降に起こったことで、依然、日本からは制御不能に近い円高となっている。
背景には、日米金融当局の誤算から生じた市場不安心理が指摘できる。
まず、年初の2016年米経済堅調との見通しが2月にして早くも崩れつつあること。それが米利上げ観測を更に不透明にしている。
そして、日銀のマイナス金利導入が、結果的に市場の潜在円高圧力をあらわにしてしまったこと。円安に向かうはずが、ドル全面安の波に巻き込まれたとはいえ、円高になってしまったことのショック効果は大きい。マイナス金利発表後は、121円台を付け、円安・株高の期待が高まっただけに、失望感が円買いを増幅させている。
その結果、今回の円買いは、米金利低下という金利差要因と、株安・原油安に起因するリスクオフによる逃避通貨へのマネー流入現象という複合構造になっている。
詳しくは昨日本欄「FRBと日銀、連続二つの誤算」を参照されたい。
さて、115円、1万6000円はアベノミクスにとって正念場。死守せねばならぬ防衛ラインだ。マイナス金利という切り札を使った直後だけに、金融政策による追加支援は、当面期待できない。口先介入で、115円が「クロダ・ライン」をにおわせても、欧米市場には通じない和製英語である。
世界的には米利上げが世界経済に与える影響のほうが、はるかに強い。日本のアベノミクスまで思いやる余裕など殆ど感じられない。日本は自らの道を自ら切り開かねばならない。
北朝鮮ミサイル発射への対応に追われるなかで、経済への配慮も怠れない。しかも、司令塔甘利氏は辞任したばかりだ。円高勃発により、アベノミクスの真価が問われる局面を迎えることになった。
今日の日経平均は寄り付きから600円を超す暴落。
金は1200ドル近傍まで戻してきた。
今朝の日経朝刊にも金相場騰勢の見出し。私のコメントは「NY金高は米国経済悲観論の裏返し」。
今朝の日経には、かんぽ財団のセミナー講演告知も出ていた。
金セミナーではなく、経済セミナー。円高、原油安、中国、マイナス金利などがトピック。
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http://www.kampozaidan.or.jp/CL01_01/index.html
今日は、株暴落、円暴騰、10年国債マイナス利回りなど大変なことになっているので、今夜10時からのBSジャパン「日経プラス10」冒頭に生出演で語ります。
最後に、今日の食べ物写真は、特大富有柿、富山から。
爪楊枝との大きさ比べると、でかさが分かるでしょ。
それでも、今年は暖冬の影響で、難しかったとのこと。