豊島逸夫の手帖

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バーナンキ氏、FRBマイナス金利論の波紋

2016年322

「米国でマイナス金利政策導入が想定されるケース。将来、FRBがゼロ金利政策に戻り、フォワードガイダンスによる口先介入で長期金利低下を試みたうえで、更に、追加緩和が望まれるが、新たな量的緩和発動が正当化できない場合。マイナス金利政策が、追加緩和せず、と、大型量的緩和発動の間の合理的な妥協点となるかもしれない。」

前FRB議長バーナンキ氏がブログのなかで、米国のマイナス金利政策について論じている。

「マイナス金利政策は、制御できる範囲のコストとそこそこの効果を持つ。但し、米国で当面使われる可能性はかなり低い。」との条件つきである。

とはいえ、マイナス金利についての抵抗感を持っているわけではない。「マイナス金利に多くの人たちが違和感を感じているようだが、実質金利がマイナスになることは頻繁に起こるのだから、名目金利がマイナスになってもおかしくない。」との割り切りである。

その効果については、例示している。

「2011年9月に米国実質政策金利はマイナス3.8%にまで沈んだ。そこで、もしFRBが名目政策金利をマイナス0.5%まで引き下げていたら、実質政策金利はマイナス4.3%程度になっていたであろう。これは、金融が正常な状況であれば、0.25%の利下げ2回分に匹敵するので、決して無視できない追加緩和量といえる。しかし、劇的変化をもたらすとは考えにくい。」

米国で、どこまでマイナス金利幅を拡大できるか、との命題については、下限をマイナス0.35%としている。

一般論としてマイナス金利となると、顧客は現金の自宅保管を選択するかもしれない。しかし、金融機関が適度な保管料で預かってくれるのであれば、貸金庫を選択するであろう。

では、金融機関が顧客の現金を保管する場合に徴収する保管料の損益分岐点はいくらか。0.35%とFRBスタッフは試算しているのだ。しかし、この水準を超えると、顧客は現金自宅保管を選択するであろうから、マイナス金利政策は効かなくなると説明している。

米国でのマイナス金利議論は、FRBが2010年に検討したことがあると、イエレンFRB議長が議会公聴会で明かした。そのうえで、マイナス金利政策を否定しないが、その可能性は低いと語った。

更に、FRBが民間銀行対象に実施するストレステストの前提条件にマイナス金利が入った。2016年1月28日付けのリリースによると、2016年の「非常に厳しいシナリオ」として、米失業率が10%まで上昇と短期米国国債のマイナス金利化を明記したのだ。

バーナンキ氏も、米国経済見通しについて、経済成長・雇用が持続すると望み期待するが、今後数年内にかなりの経済停滞がおきる可能性も無視できない、と書いている。そのときは、金融・財政政策のポリシーミックスになるが、金融政策の限定的な選択肢としてマイナス金利もありうるとの考えなのだ。

そして、今日の写真は、富山から直送の魚介類を自宅で調理。

富山湾は天然の生簀といわれ、深いので、様々な魚介類がとれる。

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くるみ入りワラビ餅も旨かった。

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2016年