豊島逸夫の手帖

2016年5月20日

今日から仙台でＧ７財務相中央銀行総裁会議。明日まで二日間。

「センダイってどこだ？」
「イエレン氏発言が報道されたら深夜でもかまわない。すぐ知らせてくれ。」
仙台Ｇ７で海外市場が最も注目している人物は、イエレンＦＲＢ議長だ。
Ｇ７直前に公表された４月ＦＯＭＣ議事要旨が、市場にショックを与えたばかり。市場がほぼ「あり得ない」と見ていた「６月利上げ」が、実は、かなり具体的に議論されていたことが判明。１９日にはイエレン氏に近いダドリーＮＹ連銀総裁が、追認する如く「６月、７月の利上げは適当かもしれない。」と発言。では、利上げに極めて慎重な姿勢をにじませたイエレン氏のニューヨーク・エコノミック・クラブでの発言は何だったのか。４月ＦＯＭＣ後の５月６日に発表された米雇用統計の非農業部門新規雇用者数は１６万人と悪かったではないか。平均時給が上昇したことのほうを重視しているのか。イエレン氏が本音を語るはずもないが、なにか手掛かりを得たい。同氏の次の講演予定は５月２７日ハーバード大学、６月６日フィラデルフィア。市場は待てず焦れる。イエレン氏はどこだ。ジャパンのセンダイだ。ということで、ＮＹ勢が騒いでいる。昨日は、中国国営テレビのインタビューも受けた。米利上げは中国からのマネー流出を加速させるので、やはり気になる話題なのだろう。
とにかく、市場は、急速に「６月利上げ」を前提としたポートフォリオの組み替えを始めた。

まずは、ＮＹ株・円・ユーロ・商品が売られている。そこで買われ始めたのが米ドル。ドルインデックスは一時９２台まで低下していたが、９５の大台を回復した。

米国債は売られるかと思いきや、マイナス金利下の日欧投資家からの買いが絶えず、売りと買いが交錯する。

日本が注目する円に関しては、ファンドの投機的円買いポジションが売り戻されている。しかし、新規の円売りポジションを積極的につくるほど、ドル高円安へのトレンド転換を確信しているわけではない。

原油の動きは複雑だ。足元のドル高で「市況の法則」では売られるはずだが、カナダ山火事、ナイジェリア・リビア・ベネズエラの政情不安という地政学的要因による生産減予測を材料視した買いも入る。結果的に、５０ドル大台を前に売買拮抗状態だ。

市場にとっては悩ましいのは、英国ＥＵ離脱を問う国民投票が近づき、英紙の世論調査結果では、賛否両論僅差となっていること。
米利上げと英ＥＵ離脱のイベント・リスク、そしてトランプ大統領誕生の可能性も考慮せねばならない。
円相場に関しては、米利上げの「ドル高・円安」要因と、イベント・リスクが生じた場合の逃避マネーによる円買い要因が交錯する。
もし本当にイエレン氏が６月利上げに踏み切れば、これは大きなサプライズゆえ、対ドルの円相場が１１３円を超える状況も想定される。いっぽう、本当に英国がＥＵ離脱にＹＥＳとなれば、１０３円までの円高も想定される。その差は１０円前後にも達する。
それゆえ、仙台でのイエレン氏の言動に世界の市場の注目が集まるのは当然であろう。
「イエレン氏の訪日土産は、ＦＯＭＣ議事録と円安だったね。」
ＮＹのファンドの呟きが印象に残る。

そして、金は、１２５０ドル台、プラチナは１０１０ドル台まで続落。
ドル高の影響強し。まぁ、こういう短期的乱高下を繰り返しながら、徐々に価格水準を切り上げてゆくのだろうね。まずは１３００ドルが壁。下値は切り上がって１２００ドル。
プラチナは、今年、供給面で生産が増えず、自動車用需要はまぁまぁというところで、昨年のような暴落は無い。随分と需給環境は改善した。

さて、昨日は、久しぶりに２５年来の友人、澤上篤人さんと会った。最近は、オペラ振興財団を設立して、その方面にも傾注しているとのこと。昨日も、これからイタリアへオペラ関係の仕事で行くと、慌ただしく去っていった。近々、銀座で二人のトークをやることで合意。この二人が喋り出すと止まらなくなるよ(笑)。私もオペラ好きだしね。

次は、明日発売のマネー誌の巻頭に載った専門家株価予測。

私が最も弱気だね。シナリオＡとシナリオＢと二つ出せと言われたが、そういうヘッジをかけるのは潔くないと思うほうなので、私だけ一本勝負(笑)。
外れたら反省原稿書くぜ！

最後に、澤上さんと食事した銀座の店で出た色々な自家製パン。

私は無類のパン好きなので、たまらない。昨日は、話に夢中になって、ジックリ食べられなかったが、今度行ったら、パンを全種類食べるぞ～～～。同席した方が、自分でパンを焼くほど入れ込んでいるので、色々含蓄を聞いて楽しかった。
澤上さんとのトークも、投資よりオペラとかパンになるのかな(笑)。まぁ、それくらい、心に余裕が無くては、投資もうまくゆかない。切羽つまった決断は、良い結果をもたらさない。

なお、２３日月曜日の「ミヤネ屋」にまた生出演します。今回のお題は「消費増税延期か実施か」。