2016年7月26日
今日の話は、このブログではお馴染みの事だが、最近、またもや、増えて来たので掲載。新規読者も多いしね。
「ドルや金を買いたいのだが。」
筆者のところに相談にくる知り合いのなかで、外貨建て投資に強い興味を示す一団が、財務省・日銀のOBたちだ。退官した同期や先輩たちゆえ、会話にも遠慮がない。
「自分は日本国の台所の実態をこの目で40年間見てきた。」「量的緩和でマネーが大量に供給される現場で働いてきた。」
「通貨の番人」役を長く勤めてきた人物たちが、退官した翌日から個人投資家となり、退職金の運用を考え始める。そのときに、番人として守ってきたはずの円を持ちたがらない傾向がある。
そもそも、ドルや「代替通貨」の金を買うという投資行動は、円に対する不信任投票だ。
彼らのドル・金選好の根底には、膨張した公的債務・通貨供給量を「正常化」する出口の過程でインフレが不可避との認識がある。円という通貨の価値が希薄化して、長期的には円安とみる相場観だ。この点については「少子高齢化で移民も拒む国の通貨は長期的に下落するから円安。」と見る著名投資家ジム・ロジャーズ氏の考えと共通点がある。
「膨張した国の借金は、国民がまともに働いて返済できる規模ではない。量的緩和の出口戦略は未知の領域だ。ここは、資産防衛するしかあるまい。」
よく聞く議論だが、国の財政・金融政策の中核にいた人たちから、本音ベースで粛々と語られると、背筋がひんやりするごとき、説得力を感じてしまう。
現役時代は、コンプライアンスで個人投資は出来なかったので、生まれて初めて「証券口座」を開設する事例も少なくない。郊外の支店で、自分の娘より若い女性の係員に1時間、リスク開示の説明を神妙に受けた、と苦笑して語る人もいた。「一人では不安なので妻同伴で赴いた。」との告白もあった。仕事上、兆円単位の資金移動には慣れていても、いざ、虎の子の個人資産を動かすとなると、戸惑うものなのだ。
それにしても、考えさせられる現象ではある。
今朝の日経トップ記事が、「年金債務91兆円、積立不足26兆円重荷」。年金の運用もマイナス金利では増えず、益々、年金支払いの企業負担は増えてゆくばかり。このままゆくと、まともに年金貰えるか、益々、不確実になる。とにかく、老後の年金は、今後、あてにならないことだけは確か。
それから、17面の「一目均衡」では、志田編集委員が「金投資が復活した理由」と題する原稿を書いている。
経済メディアが史上最高の買い残高とか、囃すようになり、一般誌も金について書きだすと、超短期的には、要警戒だな(笑)。