豊島逸夫の手帖

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金、米大統領選が下支え、「トランプ氏当選で急騰」警戒、市場利上げに確信持てず

2016年10月17日

首題の記事が日経15日土曜日朝刊に載りました。

市場関係者が気にかけているのが「トランプリスク」だ。2回の大統領候補のテレビ討論会を経て、クリントン氏優勢との見方は強まっている。それでも新たな醜聞などで中傷合戦が続き、先を読み切れない状況が続いている。「ファンド筋はトランプ氏の当選を信じているわけではないが、のどに刺さった骨のように気にしている」(マーケットアナリストの豊島逸夫氏)。EU離脱を巡る英国の国民投票も大方の予想を覆す結果となっただけに、慎重に見極めようとする姿勢が一段と強い。

ICBCスタンダードバンクの池水雄一東京支店長のコメントは「金はどんな商品よりも先に値が戻り上昇基調を強めた。同様の動きをする可能性がある。」これは、リーマンショックとの比較。

金融貴金属アナリストの亀井幸一郎氏のコメントは「まさに有事の金買いで一気に100ドル程度上昇し、年内に1400ドルを試す。」これは、トランプ当選の場合。

この3人は金関連記事にしばしば登場する名前ですが、私の良き後輩たちでもあります。亀ちゃんは、そもそも私がリクルートして金業界に引きずり込んだ張本人。今や家族ぐるみの付き合い。

ブルース(池水氏)は、ディーラー心理を共有できるので、信頼できる仲間です。3人集まれば、わいわいガヤガヤですが、問題は三人の「高齢化」(笑)。

相対的に若いブルースでも50代半ば。そこで、私は5年くらい前から、後継者養成を心掛けてきました。例えば、大手総研でゴールド・アナリストを養成すべく、なにかと面倒見ましたが、ある日、突然の人事異動で去ってゆきました。日本流のジェネラリスト重視の企業文化では、スペシャリストが社内の主流にはなれません。さらに、教えるにあたっても、私が40年にわたって体験したことをマニュアル化できるわけもないし、体験を一つ一つ語っても限界があります。チューリッヒやNY市場最前線で金相場と格闘した体験などは、やってみないとわからない。結局、後継者養成といってもエクセルシートとにらめっこしながらアナリストレポートを作成するタイプになってしまうのです。高速度取引で市場のプラットフォームは激変しましたが、相場が生き物であることは変わりません。

それでも、なんとかしようと、機会あるごとに、なにかと動いています。例えば、投機を煽りがちな先物業界のセミナーに私は一切出ないのですが、先物業界団体主催の若手社員教育のためのセミナーには講師として参加して、できる限り、自分の失敗談成功談なども交え、話すことにしています。米国の例をみても、コモディティー先物業界はいずれ大手金融機関の系列に吸収合併されるでしょう。そのときにヘッドハントされるぐらいの気持ちで備え、自分の「価値」を高めておけ、というわけです。

報道側も、後継者が育っていません。金担当記者が半年で変わるようでは、とてもFT(フィナンシャル・タイムズ)の相手を張れないでしょう。欧米主要メディアでは、この道10年20年のベテランが現場で書いていますから。

そして、私自身は、4年前に独立してから、マクロエコノミストとして活動しています。株、債券、外為、商品の各分野に専門家集団はいるのですが、縦割りです。でも、総合的にマーケットの流れをフォローする人間は非常に少ない。いっぽう、読者は、専門的深堀記事より、全体の流れを知りたがります。さいわい、金市場は世界経済を映す鏡なので、40年間、常に、株・債券・外為・商品の各分野を同時進行的に見てきました。金をきっかけにヘッジファンドや中国の人脈も広がりました。いまや、仕事の7割はマクロのマーケットアナリストの分野になっています。金の動きも中長期は結局はマクロ次第なのです。

今日の旨い物写真(これしか見ない読者ばかりだけど 笑)。

祇園で食した、ハモとマツタケの土瓶蒸し。これもピンキリでね。実に香りが良く、両方の素材のエキスが沁み込んだのをおちょこで頂くと、これこそ、ホンモノの食感。


そして、九条ネギたっぷりウドン。軽い昼食にいいね!


最後はお造りで、ハモと鰹の間にあるフグのにこごりが、特に良かった。

2016年