豊島逸夫の手帖

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原油・貴金属同時急騰。銀主導の上げ。

2016年4月20日

一時は地政学的要因も無視して下げ続けた原油市場だが、クウェート石油施設ストライキやナイジェリア石油施設操業停止の情報を材料視するようになった。

クウェートは圧倒的に原油依存国家なので、既にストライキは早期終息の動きが見られる。今朝も既にNYのファンドがNYMEXの24時間電子取引プラットフォーム(GLOBEX)で売買を続けている。それでも40ドルを大きく下回る地合いではない。

NEMEXフロアーでは、空売りポジションを見切り買い戻す動き(ショートカバー)が顕在化している。ときには、40ドル台から新規買いも散発的にせよ出て来た。明らかに、原油市場には潮目の変化が読み取れる。

日々原油価格に大きく振られるNY株価には下支え要因になった。

商品市場では、もう一つ、注目すべき変化が生じている。

これまでの原油価格急落過程では、原油が下がると、リスクオフとなり、金が買われるという局面が頻発した。同じコモディティーセクターで金と原油が逆相関を示していたのだ。ところが、19日には、原油が上がっても、金は売られずに上昇した。NYMEXフロアーの金ピット(立会場)は、近くの原油ピットの反騰現象に、これまでとは違う雰囲気を嗅ぎ取っているようだ。そもそも、原油と金は商品市場で連動して動くのが「常態」ゆえ、本来の姿に戻りつつあるともいえる。

更に、貴金属価格も急騰。

金より銀・プラチナの産業用メタルの上げ幅が倍以上に達したことだ。金は約1.5%上げて1250ドル台。対して、銀は約4.4%の急上昇で17ドルの大台攻防となっている。プラチナも3.7%前後上げて、1000ドルの大台を明確に回復した。NYMEXでは銀主導の貴金属価格上昇の様相である。

これは世界経済成長鈍化を織り込んだ価格レンジから抜け出す動きと読める。

例えば、銀市場だが、19日にはNYMEXフロアーで中国からの大量買い注文が話題になった。中国といえば、「金」だが、実は、店頭ではシルバーコインの資産用としての購入が急増しているのだ。単価が高い金は「ぜいたく品」とみなされがちで、賄賂にも使われ、腐敗キャンペーンのやり玉にもしばしばあがった。しかし、銀は「貧者の金」といわれるほど金より安い。筆者がアドバイザリーを務めていた大手中国商業銀行でも、販売個数ベースでは、金より銀の方がはるかに多い。特に、50グラムのシルバーコインが売れ筋だ。1オンス(約31グラム)金貨の単価は円換算で15~16万円の価格帯だが、このシルバーコインは約4500円ほどである。これなら庶民にも手が届く。

ゆえに、筆者は、常々、中国の個人消費動向を見る1つのベンチマークとして中国国民の銀買いに注目しているわけだ。

中国大手銀行店頭でこれ(下の写真)と同じ仕様の「シルバーコイン」が売れている。


「財神」=おカネの神様のデザイン。ゆえに、売り戻されることなく、長期保有される。そのぶん、銀価格水準は底上げされる。

2016年