2016年3月1日
なぜ、これをG20の場で言わなかったのか。
「石炭で130万人、鉄鋼で50万人の余剰人員」予測。「2年間で約1兆7250億円を投じ、失業増を抑える」方針。
金融政策の限界では意見が一致して、財政政策・構造改革の必要性が議論されたG20で、ホスト国中国が構造改革への本気度を示すことで好意的に評価されたであろう。
最近、習指導部は、相次いで、サプライサイド(供給側)の改革について、厳しい目標を明示している。
ゾンビ企業への融資削減による淘汰、国内粗鋼能力1億~1億5000万トン削減、そして、今回の180万人リストラ計画。
国家資本主義の国ゆえ、トップダウンの大胆な意思決定が出来る。
とはいえ、失業が誘発する社会不安は党本部が最も嫌うところだ。労働者層のショックも拡散するだろう。この構造改革の痛みを、腐敗撲滅同様に力で抑え込むことが出来るか。指導部の本気度が問われよう。
上海株式市場では、この材料が懸念され、株価急落の一因ともされた。しかし、長期的に見れば、企業の体質改善が進むことで、いずれ株価上昇要因になるはずだ。
G20の参加国で、ここまで具体的な構造改革数値目標を提示できた国はほかになかったことは明白である。
いっぽう、中国人民銀行は預金準備率5%引き下げの追加緩和措置をG20後に発表した。緩和は株価には上げ材料扱いされるので上海株急落に歯止めをかける政策対応と見られる。
しかし、同時に、人民銀行が、今後の人民元安の進行を覚悟していることも露わになった。人民元安を食い止めるための、人民元買い、ドル売り介入は、市中から人民元流動性を吸収するという引き締め効果の副作用がある。それを中和するための追加緩和措置なのだ。
ここには、人民銀行のかかえるジレンマが透ける。
人民元基準値が切り下がり、上海株が下落するパターンは今後も続きそうだ。しかし、株価急落を構造改革の痛み先取りと理解すれば、長期的には買いの機会とも考えられよう。
日欧がマイナス金利の時代に、中国は、まだ伝統的金利政策で利上げの余地もある。財政赤字の対GDP比も、日米欧に比し相対的に低い。そして、構造改革にはトップダウンで臨む姿勢だ。
中国の経済政策の懐は相対的に深い。
金融緩和、財政出動の痛み止めを用い、構造改革手術に取り組む姿勢を見せることで、中国経済不信を和らげることも出来る。
米国年金など長期マネーには、構造改革の痛みで上海株が下がるなら、そこを長期的に買いのタイミングと見る向きもある。
貴金属市場は、中国追加緩和策を熱烈歓迎して急騰。
コモディティー市場にとってこのような中国関連材料はカンフル剤となる。原油も底なしの不安からは、徐々に脱却しつつある。
さて、今日の写真は、今朝もパン焼き器で自家製パン。
全粒粉とグラハム粉のブレンドが好み。
オリーブオイルをつけて食べる。最近は、ほっかほっか、というより、熱い出来たてパンを食べることが朝食になった。