豊島逸夫の手帖

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トランプ相場を試すイタリア

2016年11月21日

Dデイは12月4日。イタリア選挙の日。

NYの年金もヘッジファンドも、結果次第で、離脱ドミノを誘発しかねないリスクとして身構えている。

イタリアのCDSも、英国EU離脱時に180台まで跳ね上がった後、130台まで下がったのだが、ここにきて、160台まで急騰中だ。

イタリア10年債利回りも一時は1%台まで下落していたが、2%台まで急速に戻し、英EU離脱時の水準に接近してきた。

変化を嫌うイタリアで、改革の旗手として登場したレンツィ首相。「決められない国会」からの脱却を目指し、立法府改革のための憲法改正を国民に問う選挙に打ってでた。しかし、彼は大きな過ちを犯した。「負ければ首相辞任もいとわず。」と発言したのだ。俄かに、現政権の信認が問われることになり、野党、特に、五つ星運動など人民迎合的政党の政権批判もボルテージが上がった。トランプ勝利で、孤立主義思想、反EU感情が勢いを得ている。

しかも、イタリア経済は、膨張した公的債務処理と高失業率からの脱却に手間取り、独仏に比し、不安定な要因が目立つ。国民の不満も鬱積している。

その結果、現状では、与党と五つ星運動が競り合っている。もし、レンツィ首相が負けるようなことがあると、市場は、イタリアのユーロ更にEU離脱を連想することになろう。ユーロが売られ、ドルとパリティー(1:1)の可能性も指摘される。円は相対的に安全な通貨として買われよう。円売りポジションを急速に構築しつつあるヘッジファンドは一斉に巻き戻しを強いられる。「そのときは倍返し。」と言って憚らないファンドの声も聞こえてくる。


いっぽうで、NYの株式市場では、米国視点での「国際分散投資」の対象として、欧州株に比し、日本株の相対的安定性に注目するファンドもある。仮に円高になっても、既にかなり円安が進んだので、企業業績への影響も限定的と見ている。新興国株・中国株には不安感が、米国株には高値警戒感がつきまとうので、消去法ながら日本株に注目しているのだ。

先週、発表されたヘッジファンドのSECへの四半期運用報告(13F)で、ソロス・ファンド・マネジメントが日本株ETFを3千4百万ドルほどだが、購入したことも明らかになっている。7~9月期での買いだが、日本株見直しを象徴する現象と見られている。足元では、外人買いが増えているが、その殆どがヘッジファンドだ。長期運用の米年金基金は、トランプ氏の人事・経済政策を見極める姿勢で未だ動いていないからだ。

それゆえ、現在進行中のトランプ相場も、潮目が変わると大きく振れるリスクを孕む。

イタリア選挙以外にも、米雇用統計そして12月FOMCも控えており、米国感謝祭終了後の相場展開は、予断を許さない。

金市場にとっても、イタリアCDS上昇は、気になるところ。1200ドルの大台が維持されている背景でもある。つまり、トランプラリーが一巡すれば、マネーが戻ってくるからだ。要は、短期マネーが、循環物色で、様々なアセットクラスを回遊しているのだね。

以下は、今日の原稿の参考資料。中級者以上は見ると面白いよ。


CDS イタリア

http://www.assetmacro.com/italy/italy-cds/


10年債利回り イタリア

http://www.tradingeconomics.com/italy/government-bond-yield


ソロス13F Wisdomtree Japanが日本株ETF。金額は000単位

https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1029160/000114036116086458/xslForm13F_X01/form13fInfoTable.xml

そして、写真は先週金曜日、テレビ東京の「ゆうがたサテライト」に出たときのコメント。



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新興国マネー流出深刻。丁度、うちの事務所の副代表治部れんげが、招聘されてメキシコの国際会議基調講演に行っているので、現地からの情報として、メキシコは、非常に厳しいとのレポート。

そして、今のトランプラリーも、ハネムーン相場ゆえ、いつまでも続くわけではない。まさか、成田離婚にはならないけどね(笑)。

トランプ氏の娘婿、クシュナー氏が、トランプ氏好みで、影のキーパーソンという話もした。35歳イケメン、ハーバード卒。ビルや新聞社買収で実業家として実績。実際、安倍会談で、玄関に出迎えたのはイヴァンカ、クシュナー夫妻。ただ、大統領家族は、娘婿でも、公職につけない。とはいえ、無給なら表舞台で働けるという可能性もある。要は、「anti nepotism反縁故主義法」というのがあって、義理の父が大統領職という立場を利用したカネの動きが問題なので。そこで気になるのは、娘イヴァンカさんが、安倍会談に同席していたこと。これ、既に、米メディアは問題視しているね。公私混同には厳しい社会だから。

週末は大手FP会社の年次総会で基調講演しました。冒頭に「今、世界中で、トランプ相場がどうなるか、正確に読み切れる人はいません。なにせ、トランプ氏自身がどうするか分かっていないことは明白なのだから。それゆえ、トランプ相場に出遅れまい、と焦る必要は全くありません。焦ってギャンブル的売買やって、得するのは業者だけです。」と語りました。

2016年