2016年7月11日
閉塞感強まるアベノミクス。とはいえ、代案もなく、日本国民はアベノミクス継続を選択した。苦渋の決断であるがゆえに、不安感が払しょくできない市場こそ、ヘッジファンドには草刈り場と映る。
英EU離脱後、混迷を極める市場のなかで、日本は数少ない攻めやすいターゲットなのだ。
介入効果も、追加緩和効果も、限界を見抜いている。
介入も追加緩和も、語るうちが花。ひとたび、当局が切り札を切れば、マーケットは出尽くしと読む。
マイナス金利導入後、一旦は円安に振れたが、結局、円高を誘発した。
介入も追加緩和も、初期反応が一巡すれば、持ち札の限界を読んだヘッジファンドが一気に円買い攻勢をかけるリスクがある。
その場合、目標水準は95円。
先週金曜、米雇用統計直後、NYのヘッジファンドたちと電話会議したとき、彼らの本音を感じた。
「持ち札の少なさを一番分かっているのは、ほかならぬ日銀だろう。従って、彼らは、今後も、どういわれようと、語り続けるしかあるまい。ひとたび行動に移したときが、我々にとっては、仕掛けのチャンスとなる。」
なお、今回はポジティブ・サプライズとなった米雇用統計についてだが、利上げ先送りが強まる要因とみている。
6月の新規雇用者数が5月の1万1千人から28万7千人に激増するということは、Brexitにより次回は再び数万人に激減することも充分にあり得る。これほど、統計のボラティリティー(変動)が激しいと、雇用を論拠とする利上げは出来ないのではないか。結局、FRBは、「単月では判断できかねる。」と毎月語り続け、「データ次第」で毎月利上げ判断を先送りし続けることになるのではないか。
その結果、米国発のドル安要因に終息の気配は見られない。
良いとされる雇用統計後も、瞬間的にはアルゴリズム取引により円安に振れたが、その後、ジワリと潜在的円高圧力を見せつける結果となった。
英EU離脱選択によるポンド売り・円買い、更にはユーロ売り・円買いの波も無視できない。
参院選前までは、海外要因によるドル安・欧州通貨安の結果として「とばっちり円高」といえたが、選挙後は、内憂外患の円高の様相である。
ヘッジファンドは円安への一時的揺り戻しを新たな円買いの仕掛けチャンスと見ているようだ。もし、調整的な円安局面が生じなければ、焦れて、自ら動くことになりそう。
参院選には勝利したが、アベノミクスへの負荷は強まっている。
なお、今日発売の東洋経済に「通貨の信認が崩れ金買いが続く」というインタビュー記事が出ています。
そして、日経ヴェリタス今週号の「豊島逸夫の逸's OK!」では"もう一つの「イエレン仙台密談」"の原稿を書きました。