2016年9月9日
円相場が欧米中銀の動きに振られている。
米マクロ経済指標悪化により、FRBが9月利上げに「動かず」との観測が強まり、円相場は104円台から101円台へ円高に振れた。
しかし、8日のECB理事会では追加緩和に「動かず」の決定により、ユーロが買われ、ドルと円が売られた。円相場は101.60台から102.40台へ急落した。緩和見送りの選択肢は事前予測の範囲内であったが、ECB理事会で量的緩和終了時期延長について「議論の対象にすらならなかった。」とまでドラギ総裁に断言され、さすがに市場の失望感が増幅したのだ。
そして、円相場の真打、日銀が仮に「動かず」となれば、再び円高に振れよう。日銀にとって悩ましいのは、動いても、金融政策の限界が意識され円高に振れかねないことだろう。
日銀もECBも、同じような状況に追い込まれている。
まず、購入対象となる国債が足りない。日本では、国債市場の流動性枯渇により金利が乱高下する局面も見られる。いっぽう、欧州では、購入対象国債に独自の制限が課されているので、それを緩めるという緩和措置の選択肢がある。購入対象国債の買い入れ下限金利が設定されているので、それを撤廃する案。そして、ECBが保有できる国債の量も発行国ごとに上限が設定されているので、これも撤廃すれば、追加緩和政策となる。今回も事前予測には入っていたが、実行されなかった。
次に、マイナス金利政策の副作用が市場では意識されている。この点について、ドラギ総裁と黒田総裁とも同政策を評価するが、ドラギ総裁は副作用についても認めている。日銀も中曽副総裁が、副作用への配慮を講演で示唆した。
また、ECBの購入対象に株式を加える案も市場では議論されている。いっぽう、同中銀は、社債を購入している。
更に、ドラギ総裁も、「総括検証」に似た表現を用い、その意向を示唆している。
そして、財政政策とのポリシーミックス、及び、経済の基礎体力を強化するための構造改革の重要性については、両総裁とも強調するところだ。
中銀の内部事情としては、ECBはドイツの強い影響を受けつつ、ドラギ総裁や参加国の利害が対立するので、なかなか決まらない。日銀は、総括検証につき、内部亀裂が報道されたりしている。
為替相場については、両者とも「通貨安誘導」は強く否定するが、通貨高を望んでいるわけではない。しかし、意に反して、あるいは覚悟のうえで、市場に失望感が醸成されることにより、金融政策が通貨高を誘発する局面が増えている。市場とのコミュニケーションには難儀しているのだ。両者ともFRBには利上げに踏み切ってほしいところだろう。ドル高、ユーロ安、円安に振れてくれるからだ。
さて、ECBは先んじて「ゼロ回答」を出したが、次回に追加緩和の可能性を残した。ある程度のユーロ高は覚悟のうえであろう。
しかし、日銀は、「総括検証」について、市場になんらかの回答をせねばならない。そこで、動いても、動かなくても、円高に振れる可能性がある。
ドラギ総裁より黒田総裁のほうが、より困難な決断を迫られていることを痛感したECB理事会であった。
写真はECB前にて現地ロケ。
金・プラチナ価格も、為替次第。中央銀行の金融政策に強く影響される結果になっている。
なお、北朝鮮での核実験の可能性について、日本でも、官房長官が緊急会見で言及した。これは、有事の金買い、円買いとなる可能性を秘めるが、市場は材料を確認中。
仮に、これで上がっても、後追いの買いは危険!
有事の金買いは一過性で持続性に欠ける。