豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. ベルリンテロ、メルケル首相窮地、ドルユーロ等価も視野
Page2223

ベルリンテロ、メルケル首相窮地、ドルユーロ等価も視野

2016年12月22日


今回のベルリンテロ事件は、外為市場でも、ユーロ売り要因として、じわりと意識されている。
ドルとユーロの等価の議論も高まりつつある。フランスのメディアでは、エアバス機体が一機1億ユーロとすれば、1億1300万ドルから1億ドル程度になるので有利とする報道が流れる。

2493c.jpg
フランスでの相次ぐテロ事件勃発の段階から、次に狙われるのは、ドイツと言われてきた。ドイツ当局も厳戒態勢を敷いていた。
にもかかわらず、ドイツの心臓部ともいえるベルリンのクリスマス市で、懸念されていたトラック突入テロが起きてしまった。
この事件の影響が、ドイツ国内からEU全体に及ぶは必至だ。フランスの国民戦線党首ルペン氏は、さっそく、メルケル氏の「寛容すぎる移民難民政策」を非難している。イギリスでは、未だ根強いEU残留派の内部でも衝撃が走る。やはり、人の移動の自由は制限されるべきなのか、との議論が残留派内部でも語られる。


そしてEU存続の礎ともいえるドイツ国内では、反EU政党が存在感を強める。メルケル首相に代わる人材がいないが、来年秋の総選挙で、連立政権組成の場合は、AfDが重要な鍵を握るかもしれない。
かくして、2016年末になり、2017年はEU正念場との印象を強める出来事が起きた。
EUがこのようなかたちで揺れると、ロシアの存在感も強まる。


かたや、トランプ氏は、欧州防衛の要、NATO(北大西洋条約機構)と一定の距離を置くスタンスを見せる。トランプ氏の「米国は世界の警察ではない」とのメッセージを重く受け止め、「欧州は欧州の手で守らねばならぬ」との機運も高まっている。これまで内部疎通に欠けていたEUとNATOの間でも、連絡を密にすべく動きが顕在化しつつある。欧州側の最悪のシナリオは、ロシアのクリミア併合に対してトランプ氏が譲歩的言動をとることだ。
しかし、肝心のEU内部の亀裂が、今回のテロ事件で、更に深刻になれば、ロシア側に交渉のアドバンテージを与えてしまう。
トランプ氏とプーチン氏が接近すれば、欧州内は挟み撃ちのごとき心理状態に陥るかもしれない。
2017年の地政学的リスクの予告編を市場は見せつけられている。


なお、トランプ氏は、国家通商審議会(NTC)のトップに反中派の先鋒役ともいえるピーター・ナバロ氏を起用する。トランプ氏が自ら「著書に感銘を受けた」と評している。このカウンシル(審議委員会)が、政権内で実際にどの程度の影響力を持つのか未知数だ。トランプ流人事は、縦割り組織ではなく、並列に様々なポストを並べて、大統領自らが仕切るという様相である。2017年初は、対EU政策も含め、金市場は、トランプ人事の実相を見守ることになる。


そして、今日の旨い物写真は、旬の白トリュフのパスタ@マガーリ。


2493a.jpg

蕪と鱈白子のポタージュ。シェフのセンスが光る。こればっかりは、マニュアルなどで習うことはできない職人の技だね~~。大満足でした(笑)。


2493b.jpg

今年のクリスマス期間は、テロ・トランプ人事など、ニュースが出てくるかもしれません。なにかあれば、ツイッター@jefftoshimaに書きます。

2016年