豊島逸夫の手帖

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FOMCが消費増税延期論に与える影響

2016年3月17日

スティグリッツ米コロンビア大学教授が「国際金融経済決定会合」に招かれ「消費増税延期」論を語り、外為市場には円安モードが醸成された。しかし、FOMC参加者の金利予測が0.5%程度引き下げられたことで、その円安機運が帳消しにされた。円高が中期トレンドとして定着する可能性が高まっている。

今回発表されたFRB経済予測のなかのドット・チャート(FRB参加者の金利予測分布)を精査してみよう。

前回(2015年12月)には、2016年の中心圏が0.875%(4人)、1.125%(3人)、1.375%(7人)であった。それが、今回は0.875%(9人)、1.125%(3人)、1.375%(4人)と、明らかに金利水準が切り下がっている。

2017年も、前回は1.875%(5人)、2.125%(2人)、2.375%(4人)であった。それが、今回は1.625%(4人)、1.875%(5人)、2.125%(3人)と、やはり下がっている。

ウォール街では、この中で、イエレン氏の予測値はどれか、2016年0.875%、2017年1.875%ではないか、などの憶測が飛び交っている。

いっぽう、市場は、かねてから、FOMC参加者が将来の金利水準を高めに見ていることに注目していた。FFレート先物市場が示す値より常に高いのだ。この「モヤモヤ感」が、今回、FOMC参加者が妥協することで、晴れたともいえる。

その背景には、海外要因の不安が指摘されている。

このFOMCサプライズにより、2017年末でも、FFレートが2%の大台に届かない見通しが強まった。

これに対し、FOMC声明直前に発表された2月の米消費者物価指数は食品とエネルギーを除くコアで前年同期比2.3%上昇してきている。このままゆくと、実質金利マイナス状態が来年にかけて続くことになる。FRBはインフレ指数としてPCE(個人消費支出)のデフレーターを重視するものの、商品市場は、すばやく「買い」で反応した。WTI原油は5%以上急騰して38ドル台、金も1230ドル台から1260ドル台まで急反騰している。

そして、外為市場で強まるドル安円高モード。

時系列でみると、日銀マイナス金利導入、欧州中央銀行(ECB)の大型追加緩和、そしてFRBの金利見通し引き下げと、日欧米の重要金融政策会合のたびに円高に振れている。

そのなかで、安倍首相は、総選挙を視野に、消費増税延期について公に議論する場を設定した。円高の逆風のなかで消費増税も出来まいという話にもなろうが、消費増税延期による円安効果は期待できないともいえる。

今回のFOMCは、正念場のアベノミクスに重い課題を突き付けた。

なお、米国サイドでは、トランプ・リスクが、ミニ・スーパーチューズデーを経て、益々無視できない状況になっている。

万が一、トランプ大統領ともなれば、保護主義が強まり、通貨政策はドル安に振れることになろう。市場が混乱するなかで、FOMCも利上げどころか利下げさえ選択肢に入る市場環境も絵空事とはいえない。

ドット・チャートも大きく変化する可能性をひめる。

さて人事異動の季節。

連日、色々な会社の知人たちから、あいさつメールが舞い込む。

人事というのは、悲喜こもごもだね~~。

日本の企業はジェネラリスト志向が強いから、思わぬ部署へ異動という事例が多い。

その点、トレーダーは特殊な職種で、向き不向きがはっきりしているから、全く関係ない

部門から異動してくると、戸惑う人たちも多い。

スペシャリスト育成にも長所短所はあるけどね。

同時に、人事に運もつきものと感じる。

2016年