豊島逸夫の手帖

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米年金は消費増税賛成派、ヘッジファンドは反対派

2016年5月26日

今日は外国人投資家の動きをまとめてみる。

まず、日銀金融政策について。

大勢の意見は、追加緩和をやってもやらなくても、大きな変化はない。好意的な見方でも、ミスター・クロダは仕事をした。現在完了形でgood job(よくやった)。マイナス金利は、不透明なこの時期に、あえてこれ以上いじらないほうが良いのではないか、とのコメントが目立った。

次に、財政政策。

ここでは、年金関係者は、日本株長期保有前提ゆえ、財政規律を重視するので、消費増税賛成派が多い。年金基金内で稟議をたてるときも、日本国債格下げ見通しとなると、日本株保有を正当化しにくい。いっぽう、ヘッジファンドの過半数は消費増税再延期派だ。彼らは、アベノミクスに見切りをつけて日本株を売却した。しかし、消費税10%実施時期が先送りされれば、政策効果の賞味期限は限定的だが、日本株買いも選択肢に入ると割り切っている。特に、財政出動が10兆円を超す規模になれば、短期的な買い材料としてはインパクトある。対照的に、年金関係者は、10兆円も、と聞くや、アンビリーバブルという反応だった。

次に、円高について。

ドル円の相場観は、ヘッジファンドの間でも割れている。ドル高・円安派とドル安・円高派が6:4。

短期的には6月利上げの現実味が増しているので、ヘッジファンドにはドル高・円安派が増えつつある。円買いポジションをかかえているが、6月のFOMCまでには円を売り戻して手仕舞いの姿勢だ。クリントンもトランプもドル安政策に傾いているようだが、イエレンFRB議長の金融正常化にかける思い入れには並々ならぬものがある。まだ年内二回程度は、米利上げドル高の局面を想定しているようだ。

対して、年金マネーには、長期円安派が多い。

人口動態的に少子高齢化で移民も拒む国の通貨は売られる。極めて簡潔なロジックだ。

ゆえに、日本株長期保有とはいえ、2年程度の保有期間と割り切っている。

なお、原油高については、50ドルがレンジの上限との見方が圧倒的に多い。WTIロング(買い)の投機筋は、売り戻しのタイミングを虎視眈眈と狙っている。

そして、人民元安については、様子見。果たして、中国人民銀行が党の指示で、国内雇用を守るための人民元管理政策に戻ったのか。米利上げ観測強まる中でのドル高に影響された自然な人民元安なのか。現状では判断しかねるが、6月にかけて、英ユーロ離脱リスクに加え、チャイナ・リスクからも目が離せないとの姿勢だ。

総じて、リスク再吟味中の欧米マーケットで、サミットを契機に、日本株の厳しい再精査が始まったことを実感した。

その中で、金は、短期的に売られ気味だ。しかし、ヘッジファンドに金買いの動きが散見されることに注目している。株もリスクあるので、ヘッジとして金も買うという姿勢だ。プラチナも金に連られた売りだ。

さて、日本のメディアはサミット、オバマ広島訪問、沖縄遺棄事件の対応などの報道一色。しかし、欧米のメディアのトップニュースは、ISイスラム国とクルド人部隊との激烈な戦い。クリントンのEメール疑惑。アンチ・トランプ派のデモ、ギリシャ債務交渉妥結などときて、5番手のニュース程度の扱いでサミットが来る。30分のニュース番組の中で伊勢志摩プレスセンターから2~3分程度の中継でおしまい。現職大統領の広島訪問は「歴史的」と位置づけている。いっぽう、沖縄遺棄事件は殆ど報道されていない。世界に事件が多すぎるなかで、埋もれていることを実感。

2016年